日教寺=戦後43年間封印された写真展=反戦米国写真家オドネル氏=8月に学校で巡回展も
ブラジル本門佛立宗中央寺院日教寺(コレイア教伯ブラジル教区長)では19日(土)11時半に写真展「トランクの中の日本 ― 戦争・平和・仏教」を開幕した。広島・長崎への原爆投下という惨禍と、その後の平和の再建に思いを馳せるための写真展で28日まで。説明文は日本語、英語、ポ語。入場無料。
この写真展では米国人写真家ジョー・オドネル氏が1945年に広島・長崎で撮影した貴重な写真40枚が展示されている。当時、約300枚を撮影したが、あまりの悲惨さにフィルムはずっとトランクの中に封印されていた。だが1989年に反核の彫刻像を見たのを機に、「核戦争を繰り返さないことにつながるなら」と原爆正当化論が根強い米国で写真展を開き、以後も批判に耐えながら戦争反対を訴えた。
10年前に京都本山の佛立ミュージアムで同写真展が開催されているのを見た教伯氏が「ぜひブラジルで開催したい」と許可を求め、今年実現した。「オドネル氏は戦争の苦しさを再び見たくなくて、43年間も封印していた。説明文を読んでいると涙が出てくる。平和の大切さが身に沁みます。終戦直後、日本分割論まで出ていた時、被害国の代表であったセイロンの大臣がブッダの言葉『憎しみは憎しみによって止まず、ただ慈悲によってのみ止む』を引用して日本に対する賠償請求権の放棄を主張し、会議参加者の目を覚まさせたとの逸話にはハッとさせられた。ぜひみなさんご覧になってください」と呼びかけた。
オドネル氏の代表作「焼き場に立つ少年」も展示されており、火葬場の前で弟の亡きがらを背負って、歯を食いしばって順番を待つ様子をとらえた写真だ。2017年の年末、フランシスコ教皇はこの写真を印刷したカードを、自身の署名と「戦争がもたらすもの」という言葉を添えて、全世界の教会に配布するように指示を出したことでも有名だ。
写真展を見ていた同寺婦人部の森洋子さん(82歳、2世)に感想を聞くと「こんな子供がどんな思いでじっと立ち尽くしていたかを思うと、鳥肌がたったわ」、島元エレナさん(69歳、2世)も「辛すぎて言葉にならない。歴史としては知っていたけど、写真を見ながら説明を読むと全然違うわ」と、広島・長崎の原爆投下や終戦80周年の日を前にしての来場を薦めた。同教団の全国青年会50周年式典に合わせて開催された。
教伯氏によれば、8月3日の佛立聖地10周年でタピライ会場で展示した後、8月17日からサンパウロ市内学校で各1日ずつ巡回展示をする予定。「今からでも申し込みできます。希望する学校はご連絡を」と呼びかけた。問い合わせ先は電話(11・5572・7273)
【会場】本門佛立宗 日教寺(Rua Vicente da Costa, 211 – Ipiranga, São Paulo)