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マイゾウ・メーノス(まあーまあー)の世界ブラジル(29)=サンパウロ 梅津久

2025年7月29日

第22話―飛行プラン

 ブラジル人の性格、プライドに関しては、前の小話で話して来ておりますが、仕事を進める上で一番困るのが、計画性のなさです。家を改造するにも、1週間で出来ると云ったものが2カ月。購入した品物を何日何時に届けてもらう約束がただひたすら待つのみ。

 会社でも同じ。口では「はい、出来ます、大丈夫です」と云って「それでは、何時までに出来るのですか?」と聞くとしばらくして

 「…●日まで!」

 「エー、大丈夫?では、それまでのスケジュールを提出して下さい」

 「大丈夫です、まかして下さい(デイシャ・コミーゴ、俺に任せて)」

 となり、いっこうに催促してもスケジュールが出て来ない。しびれを切らして

 「草案を作ってみたから、それぞれの項目に日付と担当者を記入すれば、スケジュールが出来るよ」と言えば

 「有難うございます。すぐやります(ジャージャー、今すぐに)」

 しかし待てど、暮らせど出てこない。

 要は、口で頭に浮かんだことをボンボン話すことは上手に出来ても、頭の中でそれらを順序だてて整理し、それを計画として表にすることが出来ない。習慣がないのです。

 そこで、私が頻繁に口にしているのが「飛行プラン(Plano de Vôo、プラノ・ディ・ヴォー」です。

 飛行機が飛ぶには「飛行プラン」があって、そこには飛行経路、時間、その他が記載され、空港管理局の許可をもらい、それに沿って飛行する。計画からずれれば空港管制塔に報告、監視(モニター)され、「飛行プラン」から外れると、的確に計画変更の指示を受け安全に目的地に着くことが出来る。

 「釣りに行くにも同じだろう。誰と、何時、どこに集まって、何時に車で出発。船に乗って、どこに泊まって…何時に戻ってくる。釣りのための準備は船、宿泊場所の予約もするでしょう。家族にも何時までには戻ると伝言もするでしょう」

 それと同じです。

 「計画なしでは、闇の中を歩いているのと同じ。だれもあなたの歩いているところが見えないし、フォローも出来ない。本人もどこに、何時着くのかも解らないでしょう?」

 だから「飛行プラン」が必要なのだとピアノのキーをたたくように何度も繰り返すのですが、それが出来ない。

 結局は、それぞれの仕事の内容に合わせて、私がスケジュール表をつくり、皆に集まってもらって、手直しをし、それを提出させることになってしまう。

 でも、何回か続けると

 「おーどこかでみたことがあるスケジュール表だ」

 なんと私が作ったスケジュール表をアレンジして使ってくれるようになってくる。

 「少しは、進歩したか」と一人ごとになる。

 次に小鳥のように常にさえずり続けているのが「プラーゾ(納期)!!!プラーゾ!!!」です。

 これもブラジル人の性格「アテー・アマニャン(また明日まで)」で期限、納期が守れない。

 製造部門は、納期遅れが発生すれば、すぐにお客様のクレームとなり、場合によっては多額の損害になるので、内外の理由に関わらず、どんなことをしてでも納期を守る。

 ところが、間接部門、特に事務部門は「納期」の重要さが解らない。催促しても催促しても、なしのつぶてで、最後は「なになにがあったので出来ていません」とくる。

 「デウス・ケ・サーベ(神様が知っている、俺のせいではない)」となってしまう。

 それで「仕事の納期は製造と同じ、きちんと守らないと、いかに立派なものを作っても必要な時に出来なければ、それはただのゴミになってしまう。仕事の評価がゼロとなってしまう」だから「プラーゾ!!!プラーゾ!!!」が大事なのだと云い続けている。

 「あいつの名前は、プラーゾ」と云われているかもしれない。


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