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マイゾウ・メーノス(まあーまあー)の世界ブラジル(30)=サンパウロ 梅津久

2025年8月5日

第23話―後ろ向きの子供達

 子供達はどうでしょうか。ブラジルにも青少年保護法はあり、義務教育法も存在する。子供を学校にやらなければ法律で罰せられる。これもどこまでが守られているのか、“マイゾウ・メーノスの”世界である。

 一番残酷なものは、ブラジルの砂糖キビ畑で働く日雇い労働者の子供達。砂糖キビは時期が来ると一斉に刈り取らなければならない。また、その時期を逃すと次の収入の見通しが立たない。報酬も刈り取った砂糖キビの量による。

 そのため、家族はナタを持てる年齢の子供達全員を仕事に駆り出す。それも暗いうちに起き、日の出は畑で迎え、日の入りまで働く。昼食は砂糖キビをかじって、水を飲むだけ。子供の手は豆とキズだらけで見るに忍びない程である。そこが終われば、次の砂糖キビ畑へと遊牧民族のように移動して行く。

 また、砂利採集場でも石を砂利に砕く仕事に子供が駆り出される。当然安全メガネなどないから小石が目に入ってめくらになる事故が頻繁に起こる。マスクもしないので粉になった石を吸い込み肺に溜まり肺病になる。材木製材所でも多くの少年が働いている。はだしで、安全防具などなにもない。指、腕を切るくらいなら良いが、大きな鋸に巻き込まれ死亡したというニュースも新聞に載る。

 逆にまたニュースでは度々この様な青少年のドキュメンタリーニュースを流し、雇用者、親達を訴えるが、いっこうに減らない。政府としてもこの様な家族に子供を学校にやったら最低給料を与えるという奨励金制度を設けたが、数カ月でオジャン。子供達はまた仕事に戻ってしまった。政府が約束のお金を払わなかったのか、学校がなかったのか、親の指示なのか不明だが、子供達は元の姿に戻ってしまった。

 地方だけでなく、大都会の街でも見かける光景であるが、交差点で信号待ちして車を止めると「おじさん、小銭頂戴」と子供の手が窓から入って来る。良く回りに目をやると母親と思われる大人が建物の陰で子供の様子を見ている。子供を使って物乞いをしているのである。

 車を道に留めると、どこからとなく子供達が寄って来て「車見ておいてやる」と言ってくる。もちろん後でチップを貰うためであるが、用事を済ませ戻ってくると、遠くから走ってきてチップをもらう。本当に見ていたのかどうかわからない、遊んでいたのではないかな。

 これがもう少し年長の子供になると、「フラネリーニャ(車拭きの布(フラネーラ)に由来」という一種の職業となる。道路の一部の駐車区域を占領して、駐車したい車を呼び込み、駐車料(チップ)を迫ってくる。チップを断るとタイヤの空気を抜かれたり、車体に傷をつけられるから、チップを払うようになる。もちろん親分がいて、それぞれの場所を管理し、子供達からピンはねして儲けている大人がおり、立派な車に乗っている。


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