「ロンドリーナに昭和を感じた」=相川七瀬がJH講演会で=日本移民の信仰と祭りダンス
ブラジル日本商工会議所の異業種交流委員会(渡辺優二委員長)が主催した歌手の相川七瀬特別講演会「現代に伝えたい海を渡った神まつりと信仰」が8日午後、ジャパンハウス(JH)で開催され、100人以上が詰めかけて会場が一杯になった。神道への深い見識からブラジル日系社会の祭りを論じると、渡辺委員長は閉会の辞で「最初は、なぜ講演会のテーマが『神まつりと信仰』かと思っていたが、話を聞いて理由が良く分かった」と納得した様子で語った。
冒頭、相川は「今日は、昨年一緒にブラジルへ来た大宮エリーさんが作ったTシャツを着てきました。彼女の魂がここにいると思って、今日の話をします」と万感の思いを込めた表情で話した。同い年で仲の良かったタレントで作家の大宮エリーさんは、病気のために4月23日に亡くなっていた。
相川は國學院大學神道文化学部卒業で、昨年4月に同大学大学院へ進学した。神道や祭りなどに深い興味を持つ関係で、今回の「海を渡った神まつりと信仰」という演題が選ばれたという。
1990年代後半に日本で大ヒットした『夢見る少女じゃいられない』などの相川の楽曲は、北パラナ・ロンドリーナ祭りから広まった盆踊りの現代版「祭りダンス」の定番曲として当地日系社会では有名。それを知った相川は昨年10月、同祭りを主催するグルッポ・サンセイを訪ね交流した。そこから今回のショーや講演会につながった。
相川は「昨年、グルッポ・サンセイのリーダーから『自分たちの中にある日本をどうやったら後世に伝えられるか考えた時、それは祭りだと思いついた。盆踊りを自分たち流の祭りダンスに変えればきっと後世に伝えられると考えた』と聞き、祭りというものを改めて考えさせられた」とし、「祭りダンスには祀るものがない。新しい視座をブラジルで与えられた」と語った。
調査を引用して「日本人の62%は宗教なしと答えているが、実は『信仰心はあるか』という問いなら68%が持っていると答える。日本人は神社を宗教だと思っていない。日本には8万社の神社があり、日本人はその存在を生活文化の中に内容しており、日本人の精神性の一部になっている。だから敢えて宗教として意識していないと私は考えます」とし、「移民史料館で見た移民の開拓小屋に中に神棚があるのと見たとき、わざわざ日本から持ってきて先祖を祀ることを忘れないという日本人の精神性を強く感じた」との感想を述べた。
「昨年、ロンドリーナに行った時、焼きそばや巻き寿司、ケーキやクッキーなど、手の込んだ手作りの食べ物で盛大に歓待されてビックリした。私のようなちょっとした旅人をこんなに手間をかけて歓迎し、『また来てください』と言ってくれたことに感動した。だから今回来ています。日本ではオモテナシと言いますが、手作りは手間がかかるので、つい買ってきてしまいます。手作りの品々を見ながら、子供の頃におばあちゃんが作ってくれたご馳走を思い出し、ロンドリーナに昭和を感じました」としみじみ語った。
座談会となり、サンパウロ人文科学研究所理事の細川多美子さんが全伯日系団体の概要、ブラジル本門佛立宗のコレイア教伯教区長が笠戸丸移民で当地仏教伝導の父茨木日水上人の歴史を紹介し、相川とブラジル日報協会の山田ワルテル理事長がコメントし、その後、質疑応答になった。
会場にいた、日系人を中心とする製造アウトソーシング業を営むUTスリーエム社(本社・東京都)取締役の松岡美奈子さんにも話を聞くと、「大変に興味深い内容だった。日本における日系人の認知度やイメージ向上を心がけている我々としては、相川さんのブラジル訪問は意義深いことだった」と頷いていた。彼女とは、日系ブラジル人認知拡大に向けた協業を進めているという。