横山和子著=ブラジル館で出版イベント=日系起業家を紹介する著作
大阪・関西万博のブラジル館で9月3日、横山和子氏(ICDジャパン代表、元東洋学園大学教授)とセーラ・ルイーザ・バーチュリ氏(東洋学園大学教授)による共著『日系・トランスナショナル起業家研究―ブラジル、メキシコ、日本の事例から(Transnational Diaspora Entrepreneurship: Cases from Brazil, Mexico and Japan)』の出版記念イベントが開かれた。
本書はブラジル、メキシコ、日本を舞台に日系ディアスポラ(移民子孫)起業家の実態を調査した学術研究論文。著者は約5年にわたり47人の起業家に聞き取りを行い、彼らが母国と移住先双方の社会・文化にどのように根ざし、事業機会を見出しているかを比較分析した。研究は「トランスナショナル起業」「エスニック起業」「ディアスポラ起業」などの理論を整理し、ネットワーク、文化的アイデンティティ、制度環境、心理的要因が成功を左右することを示す。ブラジルやメキシコでの事例に加え、群馬、静岡、沖縄の在日ブラジル人起業家も取り上げ、日本と中南米の経済・文化的つながりの新たな姿を描き、移民起業の可能性と課題を提示する一冊だ。
プレゼンテーションルームでは冒頭に本書を紹介する短いビデオが上映され、著者による解説と質疑応答が行われた。用意された200枚のチラシは午後2時ごろにはすべて配布され、盛況ぶりを示した。来場者はドイツのSpringer社から出版された英語版電子書籍(10月1日刊行)のQRコードを受け取り、内容に興味を寄せていた。日本語版は2026年1月に文眞堂から出版予定だ。
横山氏は「日本語を読めない日系人の方々には、ぜひ英語版を読んでいただきたい。日伯外交関係樹立130周年という記念の年に本書を出版できて嬉しい」と語った。共著者のバーチュリ氏も「万博という国際的な舞台で、日系起業家の活躍を紹介できることに大きな意義がある」と述べた。
来場した学生や研究者からも感想が寄せられ、大阪大学の教授は「日本では移民に関する研究をさらに深める必要があり、本研究は非常に価値がある」とコメント。英語版はサイト(link.springer.com/BOOK/10.1007/978-981-96-9381-8)で無料公開中。(取材:大浦智子)








