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JICA協力隊員リレーエッセイ=ブラジル各地から日系社会を伝える(49)=日伯で変わらぬ児童教育の姿勢=ミラソウ学園 堀江晴美

2025年12月11日

組体操を行う生徒たちの様子
組体操を行う生徒たちの様子

サンパウロ市内にあるミラソウ学園(保育園から14歳までの園児、児童生徒が在籍する私立の学園)で、ボランティアとして活動中の堀江晴美です。

日本で長年、中学校教員として働いてきた私にとって、教育システムの異なる異国の教育現場での活動は、興味深く、好奇心を大いにくすぐるものでした。

しかし、ミラソウ学園はもともと日本の教育システムに信頼を置き、日本の道徳的価値観を基本理念とした教育活動を行いたいという目的で設立された学校ですので、初めて学校に足を踏み入れたその日から、どこか日本の教育現場に戻ったような、懐かしく、ホッとするような感覚があったことを今でも覚えています。

日本語の授業が必修であり、子供たちも教職員の方々も、「おはよう」や「こんにちは」「さよなら」などの簡単な挨拶は日本語で返してくれます。

学園長の思いは、コロナ禍で途切れてしまった日本とのつながりを取り戻し、日本の生活指導を軸とした学校の在り方を、特別活動を通じて改めて自校に根付かせたいということのようです。

過去に4人のJICAボランティアを受け入れてきたミラソウ学園には、歴代のボランティアたちが残していってくれた様々な足跡がしっかりと見て取れ、私が初っ端に感じた安心感の理由がわかったような気がしました。

そういう環境において私がしなければならないことは何かという問いかけから始まったブラジルでの活動は、毎日が目まぐるしく、好奇心と戸惑いが交錯していました。

生徒が実施する係活動の役割分担表
生徒が実施する係活動の役割分担表

保育園で幼児と一緒に歌ったりお遊戯したり、運動会では組体操に取り組んで生徒と共に一体感を感じたり、日本式の係活動では、活発に意見を言い合う生徒の自主性や上級生の責任感の強さに感心したり、日本語の劇の発表での生徒の頑張りに感動したりと、さまざまな経験をしました。

しかし、赴任から1年が過ぎる頃には、好奇心も戸惑いもある種の既視感のような、これまで日本の学校現場で味わってきた苦労や達成感と何も変わらないことに気づき、そこからは再び「現場で汗をかく先生」になっていました。

活動においてはどんなことも想定内、「できない」は禁句という覚悟でブラジルに来て、「これはできるかな?少々不安」と思うことにもしっかりと応えていくことが私の責任の果たし方だと思うことで、苦手なことも不安なことも周囲の方たちに助けてもらいながら、日本で経験してきたことを出し切る思いで活動に取り組んでいます。

言語の壁、生活習慣の違い、行動の仕方も違う異国での活動は、戸惑いを感じることもうまくいかないことも多々ありますが、不思議とフラストレーションとは感じません。

ブラジルだろうと日本だろうと、子供の成長を見守り、育もうとする教師に変わりがあるはずもなく、ミラソウの子供たちに接する教職員の皆さんの姿勢から学ぶものは多いと感じながら、いろいろな経験を通じて、私自身も成長させてもらっています。

未知の魅力にあふれ、大地も空もそして人の心も、深く広く大きな国ブラジルは、日系社会の大きさに寄り添うように日本と深く結ばれていると感じますが、触れたものはほんの一部です。もっとブラジルを知って、残された日々を、生徒たちと一緒により充実したものにしていきたいと思うこの頃です。


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