《ブラジル》ボルソナロ公務初日にいきなり入院=刺傷事件の後遺症で=物議醸した休暇満喫の後

ボルソナロ大統領は2日午後、休暇先で腹部の不調を訴え、3日未明、大統領機でサンパウロ市に向かうと、そのまま入院した。2018年の刺傷事件の影響と思われる腸閉塞で、手術の可能性も言われたが、4日未明に帰国した主治医が手術の必要はないとの見解を出している。3、4日付現地紙、サイトが報じている。
ボルソナロ氏は2日午後、休暇先のサンタカタリーナ州海岸部のサンフランシスコ・デ・スルで腹部の異常を訴え、3日未明にサンパウロ市のコンゴーニャス空港に到着。その後、空軍のヘリコプターでヴィラ・ノーヴァ・スター病院へ移動した。
大統領は病院到着後に検査を受け、そのまま入院。午前中の検査で腸閉塞との診断が出たため、経口食を避け、経鼻胃管で栄養を採りながら経過を観察されている。病院側は3日夜、内科的措置が功を奏し、体調改善と発表したが、この時点ではまだ、手術の可能性が残っていた。
だが、4日朝には同病院から、「手術の必要はない」との発表も行われた。ボルソナロ氏は2018年9月の大統領選のキャンペーン中にミナス・ジェライス州のジュイス・デ・フォラで腹部を刺されて以降、計6回の手術を受けている。また、昨年7月にも後遺症と見られる腸閉塞を起こし、入院している。
今回の判断は、刺傷事件の際に執刀を担当したアントニオ・ルイス・マセド医師が、自身の休暇を切り上げて帰国し、4日未明に同病院にかけつけた末に行われたものだ。ただ、4日現在も、手術の可能性は回避されたものの、退院のめどは立っていない。
今回の入院騒ぎは各方面に影響を及ぼすことになった。3日が今年の仕事始めだったサンパウロ平均株価指数(Ibovespa)は、昨年末の終値より0・86%減の10万3921ポイントで取引を終え、ドルも1・57%のドル高となる5・6622レアルを記録した。
また、国民の反応も厳しかった。それは、公務初日の3日に入院しただけでなく、12月27日からの休暇期間中、バイア州では25人が死亡(3日に26人に増加)し、約8万人が避難を要するほどの豪雨被害が起こっているにも関わらず、被災地にも赴かずに、ジェットスキーやシュラスコ、遊園地でのゴーカートなどで楽しむ姿が報じられ続けていたためだ。
このため、同日のネット上では「休暇中は張り切っておいて、公務初日に休んだ」との厳しい批判が殺到。この反応があまりにも強かったため、大統領次男のカルロス氏やボルソナロ派のマルコ・フェリシアーノ下議らが最高裁に対し、ネットでの発言の制限を求めて訴えを起こすなどの行動も見られた。
一方のボルソナロ氏は入院中もネットでのメッセージ発信を止めず、ベッドに横たわった自身の姿の写真に「信仰(Fe)」などのハッシュタグをつけ、支持者に対し、体調回復を祈るよう呼びかけた。ミシェレ夫人も、「夫はこれからも刺傷の後遺症に悩むことになりそうだ」との発言を行っている。
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3日、CNNブラジルが、入院中のボルソナロ大統領が「コロナウイルスの陽性反応が出た」という誤報を流した。CNNはすぐに訂正報道を行ったが、大統領支持者たちはこれに乗じる形で、「CNNはゴミだ」というハッシュタグを立て、拡散する行動を行った。メディアの過ちを正す行為は必要だが、このような過剰な反応が、大統領や支持者の言動が「マスコミ攻撃」と呼ばれる所以になっていることも知るべきでは。支持者としては、年末年始にかけての休暇満喫と入院騒ぎでボルソナロ氏が強い批判を浴びたことへの反撃の意味もあったのかもしれないが。