《ブラジル》ウクライナ危機の制裁受けロシアが肥料輸出を一時停止=代わりにベネズエラが提供申し出?

【既報関連】テレーザ・クリスチーナ農務相が4日、ウクライナ侵攻に対する経済制裁により、ロシアからの肥料輸出が実質的に停止したことを認めた。肥料確保は、ボルソナロ大統領が2月に行ったロシア訪問の主目的のはずだった。これを受け、ベネズエラのマドゥーロ大統領は5日、ブラジルなどに肥料を提供する準備があると発表し、波紋を呼んでいる。4、5日付現地紙、サイトが報じている。
4日、ロシア政府は同国内の肥料製造会社に輸出の一時差し止めを命じた。これはロシアからの制裁対抗処置ではない。ロシア商工省はその理由を、制裁処置により輸出のための輸送部門に問題が起きているため、それを悪化させないための予防的処置と発表している。
ロシアはウクライナへの侵攻後、諸外国から強い経済的制裁を受けており、欧米諸国のコンテナ船やトラックなども同国との間の業務を停止した。ロジスティック停止の影響を受けた一つが肥料で、ロシア商工省は「肥料の輸出が止まれば、中期展望では何億人もの食生活に直接的な影響が出るだろう」との声明を出した。
これはブラジル政府が予てから恐れていたことだ。ブラジルがロシアから輸入する肥料の量は年々増えており、2017年には560万トンだったが、2021年には930万トンに、4年間で66%も急増している。
ボルソナロ大統領がウクライナ危機の最中に米国の強い反対を押し切ってロシアを訪問した最大の理由も、農業界が同国からの肥料輸入量維持の約束取り付けを望んだためだった。ロシアは世界的な肥料産出国で、窒素肥料は約10%のシェアで世界2位、カリウム肥料が19%で2位、リン酸肥料が7%で4位となっている。
このような大国が肥料の輸出を止めれば全世界的への打撃は避けられない。だが、ブラジル農務省は10月までは在庫があるし、ロシア政府の発表直前に同国の肥料大手のアクロン社がブラジルへの肥料を載せた船も出したから、当面は大丈夫だという。ただ、10月までに450万トンの肥料輸入との算段実現は困難だ。
他方、クリスチーナ農相は2月のイランに続き、12日にはカナダとも肥料輸入交渉を行う。ブラジルがロシアに最も依存しているのはカリウム肥料で、それは国内の肥料消費量の23%を占めている。また、ロシアの侵攻協力国のベラルーシ産も3%を占めている。ブラジルは世界4位の肥料消費国で、肥料は昨年のロシアからの輸入全体の60%、約59億ドルを占めている。
ロシアの肥料に最も依存しているのはサンパウロ州とミナス・ジェライス州で、用途別では大豆用が40%と依存度が高い。ボルソナロ大統領はウクライナ危機を、インディオ居住区での肥料用の原材料も含む鉱資源開発を進めるための口実に使おうとしていると報じられている。
ロシアが肥料輸出を差し止めたことをうけ、ベネズエラのマドゥーロ大統領が5日、ブラジルとメキシコに肥料を提供する準備があり、ボルソナロ氏に電話をかけるつもりだと発言した。
ベネズエラはロシアの同盟国であり、この発言が純粋にブラジルを助けるためなのか、ロシアの経済危機を支援する目的があるかは不明だ。また、ボルソナロ氏と実際に接触したかやその返答などもまだ明かされていない。