《ブラジル》大統領が遺族を二分する仰天行動=支持者である被害者兄弟と面会へ=未亡人やルーラは激怒

【既報関連】ボルソナロ大統領が12日、9日に自身の支持者に殺された労働者党(PT)会計のマルセロ・アルーダ氏の兄弟に電話をかけ、14日に大統領官邸に招いた。アルーダ氏の兄弟は熱心なボルソナロ派であるため、彼らを味方につけることで殺害事件による大統領選への影響を軽減しようとするものとして、アルーダ氏の遺族やルーラ元大統領を怒らせている。12、13日付現地紙、サイトが報じている。
アルーダ氏の兄弟招待は、熱心な大統領支持派の政治家であるオトニ・ダ・パウラ下議(民主運動・MDB)が事件のあったパラナ州フォス・ド・イグアスーまで赴き、彼らと会って道筋を付けたことで実現した。これは大統領が、アルーダ氏の兄弟のジョゼ氏とルイス氏は熱心な大統領派だと聞いたためだ。この模様はオトニ下議によって動画でも拡散された。
オトニ下議はジョゼ氏、ルイス氏に対し、自身がボルソナロ氏からの使命を帯びてやってきたと説明し、大統領に電話をつないだ。すると兄弟は、「マルセロの死を大統領選に利用するのはフェアじゃない」「ボルソナロ氏も2018年の大統領選キャンペーン中に刺傷を受けた」と語り、大統領に理解を示した上で、PT党首でパラナ州を拠点とするグレイシ・ホフマン氏の批判も行った。兄弟は、14日にブラジリアに向かい、大統領官邸でボルソナロ氏に会うことも約束した。
大統領は10日、ジョルジェ・グアラーニョ容疑者がボルソナロ氏の名を叫んで祝賀会場に乱入し、アルーダ氏を殺害した後、かなり遅れて「暴力を振るう者の支持はいらない」と18年大統領選時のキャンペーンの言葉を読み上げたが、アルーダ氏や遺族への弔辞は送っておらず、批判を浴びていた。今回もアルーダ氏とより密な関係にある遺族ではなく、自身の支持者である親族とだけ会うことになる。
エスタード紙によると、大統領はアルーダ氏の兄弟との通話前、アルーダ氏殺害事件に関し、グアラーニョ容疑者はアルーダ氏の誕生パーティに最初に侵入した際、被害者から投石被害を受けて立腹し、銃を取りに行った後、犯行に至ったと発言。さらに、同容疑者が被弾後にPT党員から頭を蹴られたことにも言及し、「左派の人たちが先に暴力を振るってきたから自己防衛として銃をとった」という理論を展開したがっているという。
今回の大統領の行為はアルーダ氏の遺族を激怒させている。パメラ夫人は「ばかげている」と大統領を批判。「ボルソナロ氏は事件が自分のせいにされるのを恐れているのだ。だから、責任を夫になすりつけようとしている」と語る。息子のレオナルド氏も「父が死んだ原因を自己責任にしようとしている。はなはだ迷惑だ」と憤りを隠していない。
ボルソナロ氏のこの行動を伝え聞いたルーラ元大統領も不快感を表した。ルーラ氏は12日夜にブラジリアで行ったキャンペーンの席でボルソナロ氏を「人でなし」と呼び、「同等かそれ以下の人たちに囲まれている」と酷評した。