《ブラジル》クーデター擁護捜査でアラス長官が企業家らと会話=モラエス判事を批判とも=捜査への評価は国を二分

【既報関連】「ルーラ氏が大統領選の場合はクーデター容認」と話し合っていたことで23日に連邦警察の捜査を受けた企業家たちが、連邦検察庁と選挙検察の長官であるアウグスト・アラス氏と会話を行っていた事実が明らかになった。23、24日付現地紙、サイトが報じている。
ボルソナロ大統領支持者として有名なスーパー「アヴァン」社長のルシアノ・ハン氏ら8人の企業家がワッツアップでクーデターを支持していたことで捜査された件は23日の国内最大の話題の一つとなった。その捜査で押収された携帯電話の記録から、彼らがアラス検察庁長官と会話を行っていたことが明らかになったという。
この件を最初に報じたサイト「ジョッタ」によると、会話の内容そのものは守秘項目とされ、公開されていないものの、捜査命令を下したアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事兼選挙高裁長官に対する批判などが含まれており、最高裁や連邦警察でも問題視されているという。
今回の捜査対象の中には、アラス氏の古くからの友人で建築企業「テクニーザ」社長のメイエル・ニグリ氏が含まれている。同氏は、アラス氏が2019年に検察庁長官に就任した際の影の立役者で、アラス氏も就任挨拶で、忘れてはならない人物として名指しで謝辞を述べている。
この件とは別に、アラス長官は今回の捜査開始直後、「モラエス判事から捜査を行うとの連絡を受けていなかった」との声明も出した。だが、モラエス判事の側近は数時間後、「22日の内に捜査を行うことは伝えてある」との声明を出した。それによると、最高裁は最高裁内の検察事務局と検察庁副長官に、捜査実施を通達している。
守秘項目とされた会話の内容にもよるが、アラス長官が特定候補の支持者とどの程度の関わりを持っていたのか、今回の統一選運営上、重大な責任を負う選挙高裁長官でもあるモラエス判事をどのような意図で批判したのかも、注目される。
今回、モラエス判事が下した捜査命令に関する国民の意見は二分されている。捜査対象になった企業家やボルソナロ大統領の支持者らは「表現の自由」を盾に、捜査を行ったことを批判している。
また、ワッツアップが捜査の発端となったことや本人たちからの事情聴取さえ行わずに家宅捜査に及んだことを疑問視する声も出ている。ボルソナロ大統領の側近は、支持者たちがモラエス判事への批判を強め、同判事との関係悪化を招くことへの懸念も抱いている。
一方、司法関係者の中ではモラエス判事の判断を適切とする声も出ている。フォーリャ紙が意見を訊いた弁護士たちは、「ワッツアップ内で政治的な意見を表明することに問題はないが、その中身が問題だ」として理解を示している。ただ、弁護士たちの一部は、「今回問題となったワッツアップの中のみでの話なのか、それ以外でも散見されたものだったのかによっても話が違ってくる」との見解を示している。