ルーラ、超富裕層課税のMP発表=富裕層課税で240億レ睨む=最低給与と所得税免税額も発表

【既報関連】ルーラ大統領(労働者党・PT)は28日、予てから「タシャソン」の名で噂されていた富裕層への課税対策のための暫定令(MP)を発表した。このMPは最低賃金を1320レアルに引き上げ、月収が最低賃金二つ(2640レアル)までの人は所得税を免除する法令裁可の式典の中で、それが実施された際の減収分を補う財源として発表された。富裕層への課税のためのMPが正式な法令となるには連邦議会の承認が必要となる。28日付フォーリャ紙(1)(2)(3)(4)が報じている。
今回のMPで決められたのは、「特別資産(フンドス・エスクルシヴォス)」と呼ばれる、富裕者が投資目的で有している巨額のファンドへの課税基準だ。
今回のMPの対象となるのは、これらのファンドのポートフォリオに数百万レアルを保有する投資家のみだが、それでも、約2800のファンドと3500の割り当て保有者が有する資産の総額は約8774億レアルと見られている。
連邦政府はこれらの「特別資産」から生じる利益に対して年に2回、15~20%の課税を行う意向だ。今までは、償還時にまとめて課税されていた。この税率は金融市場では「クォータ・イーター」として知られる一般的なものだ。
このMPによる収益は2023年32億1千万レアル、2024年132億8千万レアル、2025年35億1千万レアル、26年38億6千万レアルと試算されており、4年間で約240億レアルに及ぶ見込みだ。
MP調印後の記者会見に参加したフェルナンド・ハダジ財相(PT)はタシャソンに関し「メディアの報道を見ていると、ロビン・フッド的な行為だとか復讐劇だなどと書いてあるものがあるが、そういうものではない」とし、他の先進国の税制に適応させているだけだと説明した。
なお、この日は、企業や富豪が物価や人件費の安い地域に業務の一部を移してコスト削減を図る、「オフショア」ビジネスでの利益を対象とした課税案を盛り込んだ法案も提出された。
オフショアは節税対策にも用いられ、「タックス・ヘイヴン」と呼ばれる課税対象にならないケイマン諸島をはじめとする南国の島などに会社を持つ企業や富豪も多いが、これらの会社や事務所は名義上のみの架空のものであることも珍しくない。
なお、このオフショア課税法案により、外国における少額個人所得も課税対象になる。外国で年間6千レアルまでの個人収入は非課税だが、年間6千レアル超から5万レアルまでの所得には年率15%の課税対象となる。それを超える収入には 22・5%が課税されることになると報じられている。
この日に出されたMPとオフショア企業への課税法案は、所得税を免税とする基準の引き上げその他で減る税収分を埋め合わせ、基礎的収支の赤字解消のために不可欠なものだ。MPは発行と同時に効力を発するが、120日以内に連邦議会で審議して承認されないと失効するため、議会での行方が注目される。
オフショア企業への課税も含むタシャソンに関しては、予てから保守、セントロン系政党の反対が強く、ハダジ財相とアルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)との対立も伝えられていた。
だが、ここにきてリラ議長が「基盤を揺るがさない、高すぎない課税率であれば、オフショアへの課税にも賛成する」と、態度を軟化させる発言を行い始めている。
G1サイト(5)やテラサイト(6)によると、ルーラ大統領は29日、5月に出したインフレ率以上に調整された最低賃金と所得税免税に関するMPが両院の承認を経て正式に裁可されたことと共に、超富裕層とオフショア企業に課税するためのMPと法案を出したことに関し、「妥当なことをしたまで。連邦議会には富裕層ではなく、貧困層を保護していただきたい」との希望を語っている。