上院=最高裁に真っ向から対決=先住民土地争議問題で=大統領の拒否権行使は必至

【既報関連】上院は27日、最高裁が先に下した判決に真っ向から対決する法案をあえて承認した。最高裁は27日、先住民保護区の制定は現行憲法公布日の1988年10月5日に所有していた土地または当時法的係争中の土地に対してのみ認めると規定するマルコ・テンポラル(タイムライン)に基づく判決は違憲とした21日の判断を受け、善意の居住者への補償を定義した。だが、農業界の反発などを受け、上院は同日、マルコ・テンポラル法案を承認。先住民居住地を巡る問題は大統領による裁可まで持ち越された。

26日付コングレッソ・エン・フォコ・サイトなど(1)(2)(3)(4)(5)(6)によると、21日の審理直後から報復を唱えていた農牧議員らは上院に働きかけ、27日に憲政委員会と本会議でマルコ・テンポラル法案を承認。本会議での票は賛成43、反対21で、閣僚のいる政党も過半数が賛成票を投じている。
先住民保護区制定に憲法公布日という枠を設けるマルコ・テンポラル法案は大統領裁可を待つことになったが、28日付CNNブラジルサイトなど(7)(8)は両院政府リーダーのランドルフェ・ロドリゲス上議の言葉などから、大統領は法案そのものに拒否権を行使するだろうと報道。大統領が拒否権を行使した時は議会が覆すことも可能だが、その場合は最高裁が法案の違憲性を論じる可能性もある。その場合の審理は、28日に就任したロベルト・バローゾ、エジソン・ファキン正副長官の指揮の下で行われることになる。
28日朝CBNラジオ(9)でジャーナリストのミリアン・レイトン氏は「大統領が拒否権、連邦議会がそれをひっくり返す。その是非を巡って最高裁が違憲性の審理、それを受けて連邦議会が憲法改正案を提出という流れも考えられる」と今後の成り行きを予測した。
マルコ・テンポラルに関して、最高裁は21日、判事投票9対2で憲法公布日の1988年10月5日を先住民保護区制定の基準とする学説は違憲との判断を下した。この判決内容は本紙23日付《最高裁=土地争議で先住民優先判決=議会や農業界の反発必至か》で詳細を報道した。
だが、この時点では、先住民居住地内に土地を得、生産活動を始めた農家への補償問題などは結論が出ておらず、27日に審理が再開された。
補償問題を討議する必要性は、先住民居住地内で生産活動を行っている農家などは多くの場合、迫害や軍事政権による強制移動などで一時的に先住民がいなくなった土地の所有権を国や州から得た、善意の居住者であることや、生産活動継続のために現在の農牧地に代わる土地確保の必要があることなどから生じた。
27日付G1サイトなど(10)(11)(12)は、ローザ・ウエベル長官は最後の審理で、善意の居住者への補償の可能性、先住民居住地から離れることを義務付けるか、鉱物資源採掘などの開発行為を認めるかなどを扱い、法的安全性を確保することを目指すと報じており、14項目からなる補償案を承認した。
27日付CNNサイトなど(13)(14)(15)(16)(17)によると、主要点は、憲法公布日に先住民が在住または抗争中だった土地での改良に対する補償は所有者の責任だが、その日には先住民による占有や抗争がなかった場合は土地改良に対する補償を受けられる。また、その土地に再定住できない場合は土地自体の価値に対する補償を受けられる。土地への補償は国が即座に行うが、善意の居住者に土地を割り当てたのが州などの場合は国が州などに金額を要求できる。土地の所有者は公的機関による補償金を受け取るまで土地を保持できる。先住民居住地の境界の定義に重大な誤りがあると証明できる場合は、設定後5年以内なら修正を認める、など。ただし、更地も補償の対象とする件は先住民や社会団体が憲法違反との見方を示している。
なお、鉱物資源採掘は、影響を受ける先住民コミュニティと議会との間で合意が成立した時のみ許可されるという現在の理解が保たれた。