下院家族委員会=同性婚禁止法案を承認=最高裁の判断に逆らう=実現可能性低いとの報道も

10日、下院の社会保障・社会扶助・児童・青少年・家族委員会が同性婚を禁止する民法改正法案を審議し、承認した。伯国では2011年に最高裁の決定で同性婚が認められ、13年から施行されていた状況下での決定であったため物議を醸したが、実施される可能性は低いとも報じられている。同日付メトロポレスなど(1)(2)(3)が報じている。
この法案は2007年に当時のクロドヴィル・エルナンデス下議が提出した同性同士の婚姻についての民法改定法案を基にしたものだ。原案そのものは同性婚に否定的なものではなかったが、これまでに8回試みられた原案の修正法案の中でも数少ない否定的解釈の一つだった、2009年にカピトン・アスンソン下議(当時)が提案したものが今回、家族委員会で審議された。
今回の法案審議で報告官を務めたのは牧師でもあるエウリコ下議(自由党・PL)で、民法1521条の「婚姻関係が持てない人」の定義に「同性愛者」を加え、同じく結婚を定義する1515条に「公的機関や民法は宗教的に婚礼を禁じる規定や典礼がある宗教に対する干渉は許されない」の一文を加えた。
改正法案では、2009年の改正法案にあった「同性愛者は家族を持てないこと」、つまり年金や相続での恩典を受けられないとする項目も継承された。
エウリコ下議はさらに、「憲法226条でも、結婚は男女の間で行うものと定義されている」と主張した。
この法案は10日に家族委員会で投票にかけられ、12対5で承認された。エスタード紙(3)によると、賛成票を投じたのは7人がボルソナロ前大統領のPL、共和者(RP)が2人、進歩党(PP)とウニオンが1人ずつと、ほとんどが保守寄りで知られる政党で、連邦政府側からはアヴァンテの議員1人のみだった。
今回の改正法案は、同性婚に関して憲法で明言していなかったことに端を発する。伯国の同性婚は2011年に最高裁が下した、同性婚も合憲とする判決以後、登記所での結婚も認められるようになっていた。同件で報告官を務めたアイレス・ブリット判事(当時)は、憲法第5条は「人種、性、年齢による権利の差はなく、全ての人が恩恵に被ることを促進すること」が目的とし、同性婚を認める基準としていた。
今回の委員会で反対票を投じた議員には、史上初のトランス議員として知られるエリカ・ヒルトン下議(社会主義自由党・PSOL)がいたことも話題となった。同下議は審理後、X(4)を通じ、「本来、この法案の審議は報告書を審査するための特別グループが作られてから行われるはずだったが、委員長のフェルナンド・ロドルフォ下議(PL)がそれを無視して審議を強行した」と批判した。
この法案は家族委員会の後、人権委員会と憲政委員会(CCJ)で承認を受けてから下院本会議で、上院でも委員会と本会議を通過して大統領の裁可がなければ発効しない。されたとしても現法案では過去に登録された同性婚はそのまま認められる。
とはいえ、11日朝のCBNラジオでジャーナリストのベルナルド・フランコ・メロ氏は「この委員会は福音派が多数を占めるから通過しただけの話で、実際は下院本会議通過すら難しいのでは」とコメントした。
連邦議会ではこのところ、マルコ・テンポラルや薬物所持の非刑罰化などに関して最高裁が議会の保守派の意向に沿わない結果を出す例が続いたのを受け、上院で最高裁判事の任期制限法案、下院でも最高裁決定を違憲とする法案を提出するなど、反発が強まっていた。