大統領就任式=トランプで遠のく外交関係=ルーラ招待されず大使出席=ボルソナロ最高裁許可待ち

米国では20日に昨年の選挙で再選を果たしたトランプ氏の大統領就任式が行われる予定だが、ルーラ大統領(労働者党・PT)は招待を受けておらず、ブラジル代表としてマリア・ルイザ・ヴィオッティ駐米ブラジル大使が出席することが明らかになった。これまでのところ、ルーラ氏とトランプ氏は電話会談を行っておらず、今後もその予定はないという。一方で、ジャイール・ボルソナロ前大統領(自由党・PL)は就任式に招待されているものの、パスポートが押収されており、渡航の許可を得るためには最高裁の判断を待たなければならないと、13日付G1サイトなど(1)(2)(3)(4)(5)が報じた。
この状況は一見異例に映るかもしれないが、実際には米国大統領就任式の伝統的なプロトコルに則ったものだ。同国では通常、国家元首を招待せず、各国を代表する大使が招かれるという慣習があるという。
ルーラ大統領は、昨年11月の米大統領選においてトランプ氏が再選を果たした際、その結果を受け入れ、祝辞を送る姿勢を見せた。
だが、ルーラ氏は当初からトランプの政策や言動には批判的であり、トランプ氏が退任した後のバイデン政権との関係強化に注力。また、大統領選前には民主党のカマラ・ハリス氏への支持を表明していた。ルーラ氏は米国との商業的な関係を重要視する一方、トランプ政権の対立的な姿勢には反対していた。
米国はブラジルにとって中国に次ぐ第2の貿易相手国であるため、協力関係は維持されるべきだが、政治的な距離は依然として存在している。ルーラ氏は、米国が持つ経済的・地政学的な責任を強調し、両国の関係を「民主的で文明的」な形で維持したいとの意向を示している。
一方、ボルソナロ元大統領は、トランプ氏の政策に対して強い共感を示しており、米国右派政治と同調する立場を取ってきた。ボルソナロ氏は、米国との外交関係強化と両国間の協力推進を重要視しており、そのためにトランプ氏の再選をかねてから支持してきた。同氏はトランプ氏から公式に就任式への正式な招待を受けたと主張し、渡米を希望している。
ボルソナロ氏の弁護団は、彼の渡航を許可するよう最高裁に求めている。同氏のパスポートは昨年2月に連警によって押収され、現在もその返還は保留されている。最高裁のアレシャンドレ・デ・モラエス判事は、ボルソナロ氏の渡航を許可する前に、正式な招待状が提出されることを条件としており、ボルソナロ氏側はトランプ氏側から送られたメールを証拠として提出した。このメールはトランプ氏の選挙対策委員会がボルソナロ氏三男のエドゥアルド・ボルソナロ下議(PL)に送ったもので、招待状として有効であると弁護団は主張している。
これに対し、モラエス判事は11日、弁護団の要請は「必要な書類とともに適切に指示されていない」と述べた。同判事は、メッセージはエドゥアルド下議のメールアドレスに送信されていたことに注目。その送信元が不明であり、式典のタイムテーブルなどの詳細も記載されていないことも指摘している。
モラエス判事はボルソナロ氏の渡米を許可するか否かに対して非常に慎重な立場を取っている。もし渡航を許可すれば、過去に行った判決の正当性に疑問を投げかけることになり、反対に渡航を拒否すれば、国際的に政治的迫害の証拠として捉えられるリスクがあるため、国内外で大きな影響を与える可能性がある。
ボルソナロ氏の弁護団は現在進行中の捜査には一切干渉しないことを強調し、他国の指導者が出席する中で、同氏も参加する権利があると主張。米国側では、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領やイタリアのジョルジャ・メローニ首相など、トランプ氏と親しい政治家が招待されており、ボルソナロ氏の不参加は不当だとする意見も出ている。