site.title

強制送還=連警「到着後の手錠は問題」=地上はブラジル刑法適用のはず=関税恐れ、ブラジル政府は静観

2025年1月29日

手錠につながれた帰国者たち(Casa Blanca/Divulgacao)
手錠につながれた帰国者たち(Casa Blanca/Divulgacao)

 24日に米国からブラジルへ強制帰国させられた不法入国者に対する米国側の扱いが衝撃を与えている。ブラジルの連邦警察によると、米軍機の中での手錠に関しては認められてはいるものの、飛行機から降りたところでの使用は認められていないほか、米国の警察の行動に疑問が残る箇所が浮上している。
 米国から国外追放された不法滞在者たちは、追放時に手足に手錠や鎖をつけられた上、腕や背中にあざやみみずばれが出来た写真などが出回ったことはブラジル社会に強い波紋を投げかけている。
 このことに関する連邦警察の見解が、G1サイト(1)などで紹介されている。それによると、不法滞在者を帰国させる際に手錠をかけることは米国では「習慣として行われている」という。
 フォーリャ紙(2)も、米国とブラジルの間では2021年に、不法滞在者を強制帰国させる場合は手錠をかけることで合意が成立しているという。この時は米国がバイデン政権、ブラジルがボルソナロ政権で、同年9月21日付で文書を結んでいる。
 だが、今回の国外追放で問題となっているのは、不法滞在者たちが飛行機を降りる時点でも手錠をはめたままで、リカルド・レヴァンドウスキー法相が解除命令を下すまで、手錠と鎖をはめたままとされていたことだ。
 米国刑法ではビザ切れ滞在は刑事罰の対象だから手錠もありえるが、ブラジル刑法では不法滞在は犯罪ではなく行政違反として罰金で処理されるからだ。米軍機内は米国領土だが、滑走路はブラジル領土なのでブラジル刑法が適用されるはず。
 このことは、2021年に結ばれた協約でも定められている。それによると、ブラジルから強制送還する場合は飛行機の中以外での手錠は認められておらず、手錠をかける場合も、極めて危険な人物である場合に限られており、義務ではない。
 連警によると、ブラジルから強制帰国させられた人たちはこれまでもいたが、ブラジルは米国のようにチャーター便を仕立てることはせず、商業便で最大2人を送るため、護送担当者が手錠を携行するだけで、実際に飛行機の中で手錠をかけたケースはなかったという。
 それが今回、飛行機の中でほぼ全員が手錠をかけられた上、機体の故障のため、米国は冬、伯国は夏という状況下でエアコンもつけられず、「女性や子供、子供と同伴の親以外は全員殴られた」との証言があるほど、暴力が振るわれた痕跡が示されている。
 ルーラ大統領とマウロ・ヴィエイラ外相は27日、強制帰国させられた不法滞在者たちの扱いについての話し合いを緊急に行った。この話し合いでは、まだ慎重に経緯を見たいとの結論に至ったが、このような動きはラ米諸国の中で出ている。ヴィエイラ外相は米国に対し、同件に関する見解表明と説明も求めている。(3)
 ただ、当面は「静観する」という方針が出たとはいえ、ブラジルは米国と左派の多い中南米の国々の板挟みとなる難しい立場にある。すでにトランプ政権はメキシコに25%の関税をかけ、不法滞在者の引き取りを拒否しようとしたコロンビアに対しても25%の関税をかけて威嚇した経緯がある。
 トランプ大統領は27日、ブラジルに関し「高い関税をかけ、米国の経済状況が悪くなることを願っている国の一つ」という、以前行った発言を繰り返しており、ブラジルに対しても高い関税をかけることをほのめかしている。(4)


今も続く奴隷労働の摘発=30年間で6万5千人救出前の記事 今も続く奴隷労働の摘発=30年間で6万5千人救出米国の圧力に屈したコロンビア=ラ米が直面する外交の現実とは次の記事米国の圧力に屈したコロンビア=ラ米が直面する外交の現実とは
Loading...