米国50%課税=ルーラ、報復関税否定せず=議会では野党議員らも困惑=最高裁の姿勢は変わらず

【既報関連】9日にトランプ米大統領が、ボルソナロ前大統領への迫害を理由に、米国向けのブラジル製品に50%の関税を課すと発表したことに対し、連邦議会や最高裁の反応が出始めている。また、ルーラ大統領は10日夜、テレビのインタビューに応え、相互主義に基づき、米国製品に50%の関税を課す可能性や世界貿易機関(WTO)に訴える可能性を認めている。
ルーラ大統領は10日夜、グローボ局のニュース番組「ジョルナル・ナシオナル」の取材に応じた。大統領はトランプ大統領に関し、「一国の大統領が他国の主権や司法に干渉した」ことを問題視した上で、「2021年1月6日に起きた米国議事堂襲撃事件のようなことがブラジルで起きれば、トランプ氏も裁判の対象となっていた可能性がある」とも語った。
大統領は関税問題に関しても訊かれ、「当方はムキになって対応しない。WTOや他の国との協議で誰が間違っているかを明確にする。それでも解決しなければ、8月1日からこちらも相互主義を実践する」と語っている。(1)
大統領へのインタビューが行われた裏では、連邦議会や最高裁での反応も出始めている。
連邦議会の野党リーダーらは9日のうちに緊急会議を開いた。G1サイトの報道によると、そこで上がった意見はボルソナロ氏にとっては苦いもので、上議の一人は、「これは自分の足を銃で撃つようなものだ。誰がこんな措置を支持するんだ? 誰が自分の国に反することをする人物の側につくんだ?」と発言したと報じられた。
事態は米国滞在中の休職下議で前大統領三男のエドゥアルド氏が、「課税の理由は自分たちの家族にある」と発言した動画を発表したことでさらに悪化。ある前大統領支持派議員は「重大な過ちだ。この悪印象は致命的な代償を払うことになる」と語ったとされている。(2)
トランプ氏はこの措置により、最高裁でのボルソナロ氏に対するクーデター計画疑惑の裁判を止めることを望んでいる。だが、最高裁の一部の判事は既に、「この措置によって最高裁の判断が変わるわけではない」という意向を示しているという。また、ジルマール・メンデス判事はこの措置発表後にSNSで、「選挙の結果に対する不満分子が暗殺計画まで含まれた暴力を振るう。そんな被害に遭う最高裁は世界のどこにもない」と、憤りの投稿を行っている。(3)(4)
アレッシャンドレ・デ・モラエス判事や最高裁に対する米国からの制裁を求めた疑いで行われているエドゥアルド氏への捜査も、関税引き上げ措置発表後はさらに厳格なものになることが予想されている。
他方、ウゴ・モッタ下院議長とダヴィ・アルコルンブレ上院議長は10日、連名で声明を出し、連邦議会の見解を表明した。それによると、50%課税問題に対しては「対話での解決を求めていく」としながらも、「経済を守らなくてはならない」とし、ルーラ大統領が示唆したように、4月に承認された経済相互主義法を米国に対して行使する可能性を示している。
ボルソナロ氏の息子のエドゥアルド氏やフラヴィオ上議らは、今回の措置で連邦議会でのボルソナロ氏を救うための恩赦法の審議が進むことを期待している。
だが、メトロポレスによると、議員たちは50%課税への対応に追われている上、ボルソナロ一家の発言や行動に対するネガティブな反応も出ていることなどで、恩赦法の審議は抹殺されたと見ているという。(5)