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【14日の市況】Ibovespa、6営業日連続の下落 トランプ前大統領の関税措置が影響

2025年7月15日

 ブラジルの株式市場は、トランプ前米大統領による対ブラジル関税の発表を受け、引き続き軟調な展開となった。主要株価指数であるIbovespaは6営業日連続で下落し、前営業日比0.66%安の13万5,290.14ポイントで取引を終えた。日中は一時13万4,839.69ポイントまで下落し、上値は13万6,186.67ポイントにとどまった。出来高は終盤時点で168億9,000万レアルに達している。

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 為替市場でも、ブラジル通貨レアルに対する圧力が続いている。対ドル相場は0.65%上昇し、1ドル=5.583レアルまでドル高が進行。取引中には一時5.593レアルを記録した。

経済活動指数、予想下回る

 ブラジル中央銀行が発表した5月の経済活動指数(IBC-Br)は、前月比0.7%の減少となり、市場予想を大きく下回った。季節調整済みの同指数は、4カ月連続の拡大から一転して年内初のマイナスに転じ、景気減速への懸念が強まった。これを受けて、短期金利先物(DI)も低下傾向を示した。

PETZが急伸、Vale・Petrobrasが軟調

 個別銘柄では、ペット関連企業のPetz(PETZ3)が4.93%高で上昇率首位となり、ヘルスケア企業Hapvida(HAPV3)が3.03%、不動産開発大手MRV(MRVE3)が2.96%上昇した。MRVは米国子会社Resiaの売却関連の動きが好感されている。なお、同社は同日夜に事業活動に関する速報も発表予定である。

 一方、BRFとMarfrigの統合を巡る動きが注目される中、年金基金PreviがBRF株を売却したとの報道を受け、BRF(BRFS3)は4.55%安と大きく値を下げた。通信大手Vivo(VIVT3)は3.08%、小売のLojas Renner(LREN3)も下落した。主力銘柄では、資源大手Vale(VALE3)が1.14%、国営石油会社Petrobrasは優先株(PETR4)が1.32%、普通株(PETR3)が1.07%の下落となった。

 市場の注目は、翌15日から本格化する第2四半期決算シーズンへと移っており、機械メーカーRomi(ROMI3)が皮切りとなる。


対米輸出に影落とす50%関税 最大でGDP0.41%減の可能性

米国内外で法的な抵抗も、農業分野が直撃受ける恐れ

 トランプ前大統領が8月1日付で導入を表明したブラジル製品への50%の追加関税について、影響は広範囲に及ぶ見通しだ。FGV農業経済研究所(FGV Agro)の研究者によると、この措置によりブラジルの国内総生産(GDP)は最大0.41%押し下げられる可能性がある。これは2024年のGDP(11.7兆レアル)を基に換算すると479億レアル(約1.4兆円)の損失に相当する。

 ただし、この関税措置には複数の法的障壁が存在する。国際的には世界貿易機関(WTO)の規則に抵触する可能性があり、米国内においても、一方的な大統領権限の乱用として司法判断により無効とされる余地がある。特に「国家非常事態経済権限法(IEEPA)」を巡る近年の判例では、同様のトランプ政権下の関税措置が違法と判断されている。

 研究者らは、「これらの関税は国際貿易の基本原則に反しており、米国の国内法に照らしても正当化は困難」と指摘している。


農業輸出への影響は甚大、中西部で最大7割減も

 2024年のブラジルの輸出に占める対米比率は約12%(403.7億ドル)であり、そのうち農産物が約30%(121億ドル)を占める。輸出品目としてはコーヒー豆、牛肉、木材化学パルプなどが多く含まれており、関税導入により最大で75%の輸出減少が生じる可能性があるとされている。

 地域別では、農業が盛んな中西部地域における影響が特に大きく、対米輸出の減少率が最大75.7%に達するとの予測もある。また、輸出の不振による供給過剰と価格上昇により、国内消費の減退と生産縮小も懸念されている。

 FGVの試算によれば、最悪のシナリオではブラジル国内の消費は130億ドル減少し、米国側でも184億ドルの消費減少が起こる見通しである。この場合、ブラジルGDPは0.41%減少、米国は0.08%減にとどまるとされる。

 関税率の不均衡も指摘されており、米国はブラジル農産品に対し比較的低関税を適用しているが、ブラジル側は一部原材料(例:ラクトアルブミンに14%)に高い関税を課している。


関税「予告」だけでも実害 国際連携で対抗を

 研究者はまた、「実際に関税が発効しなくても、その発表自体が国際貿易に不透明感を与え、すでに経済的影響が出ている」と警鐘を鳴らしている。

 対応策として、WTOなどの国際機関で被害国が連携して米国の一方的措置に対抗すべきだと提言。「数十年かけて構築された国際貿易ルールを守るためにも、各国が協調して行動を起こすことが不可欠」としている。


エドゥアルド・ボルソナロ氏、タルシジオ州知事を批判

「私への侮辱」と不快感あらわに、米国での活動続行を明言

 このような中、サンパウロ州のタルシジオ・ジ・フレイタス知事(共和者)が米国当局との対話を試みたことに対し、連邦下院議員であり現在休職中のエドゥアルド・ボルソナロ氏(自由党)は強い不満を表明した。

 エドゥアルド氏は「私への侮辱だ。我々の外交力は外務省よりも強力だということをすでに証明している」と述べ、自身の活動は最高裁のアレシャンドレ・ジ・モラエス判事への圧力を目的としており、タルシジオ知事の動きは「側面からの妨害」と批判した。

右派内に深まる分裂

 トランプ氏の関税発表に端を発したこの外交・通商危機は、保守派内での対立も浮き彫りにしている。2026年の大統領選の有力候補とも目されるタルシジオ氏は、経済的影響の火消しに動いたが、これは一部の急進派には不興を買った。

 ボルソナロ陣営の中でも、特にイデオロギー色の強いグループは、「最高裁への圧力維持」を最優先としており、米国との融和的姿勢を厳しく批判している。エドゥアルド氏の公然とした批判は、タルシジオ氏が同陣営内で孤立しつつある状況を物語っている。

「帰国はモラエス制裁が条件」 議員辞任の可能性も

 エドゥアルド氏はまた、7月20日に期限を迎える議会休職の延長について、「必要なら辞職も辞さない」と語り、モラエス判事に対する米政府の制裁が実現するまでは帰国しない意向を明らかにした。

 モラエス判事は、2022年のクーデター未遂疑惑を巡り、エドゥアルド氏に対しても国家秩序の破壊や捜査妨害の容疑で捜査を進めている。


政府、関税問題を野党の責任に結びつけ

 ルーラ政権は、トランプ氏による関税措置が、元大統領ボルソナロ氏とトランプ氏の親密な関係、ならびにエドゥアルド氏の米国での動きに起因するとの見方を示し、今回の経済的打撃を野党側に結びつける戦略を取っている。

 とりわけ、タルシジオ氏が中道的なイメージの構築を試みる中で、この関税問題が政権にとっては逆風を与えると同時に、政治的な駆け引きの材料ともなっている。


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