【2日の市況】Ibovespaは前日比0.36%安の13万8,050.93ポイント=ドルが再び下落し、0.74%安の5.421レアル
2日、ブラジル株式市場の代表的株価指数であるIbovespaは前日比0.36%安の13万8,050.93ポイントで取引を終えた。下げ幅は498.50ポイント。前日の上昇の反動もあり、7月第2営業日、すなわち第3四半期・下半期のスタートにあたるこの日は、取引全体が落ち着きを見せた。
為替市場では、前日に上昇した商業用ドルが再び下落し、0.74%安の1ドル=5.421レアルで終了。これは2024年8月19日以来の安値水準(5.412レアル)となった。一方、債券市場では将来の政策金利を反映するDI(通称:将来金利)が全体的に上昇した。
IOFめぐる政権と国会の摩擦、最高裁も巻き込む展開に
Ibovespaの下げ要因の一つは、経済指標ではなく「言葉のやりとり」、あるいは「沈黙」だった。連邦政府と国会の間の緊張が司法をも巻き込み、政治の不透明感が市場心理に影を落とした。
課税対象の一部である金融取引税(IOF)に関する政令をめぐり、連邦政府は最高裁(STF)に違憲審査を求めている。財務相フェルナンド・ハダジ氏は、「経済的・政治的な問題ではなく、あくまで法的な論点」と説明。ルーラ大統領も「合意があったにもかかわらず、下院議長が一方的に判断を変えた」と不満を示し、「立法府は立法を、行政府は執行を行うべき」と主張。STFへの提訴は「秩序を取り戻すため」とした。
司法出身のリカルド・レヴァンドウスキ法相も「民主主義には緊張も平穏もあり、それはごく自然な流れ」と述べ、過度な懸念を否定した。
政権と野党、言葉の攻防 改革論議に拍車も
与党側が足並みをそろえた一方、野党は「政権の“我々対彼ら”という対立構図は過去に機能しなかった」と批判。世論調査でも、下院議員の46%がルーラ政権を「悪い」「非常に悪い」と評価する結果が出ており、政権の課題は山積している。
そのなかで、下院のウーゴ・モッタ議長は「行政改革(reforma administrativa)を進める好機」との認識を示し、議論再開の必要性を訴えた。改革チームを率いるペドロ・パウロ下院議員は、「財政支出の見直しや税制優遇措置の一律撤廃など、提案は準備万端だ」と述べ、市場が待望する改革案を次々と挙げた。
政府、歳出見直しで金利低下を期待 BCは慎重姿勢
財務省のダリオ・ドゥリガン次官は、税優遇措置の見直しで2026年に200億レアルの追加歳入が見込めるとの試算を示した。さらに、インフレの鈍化を背景に政策金利(Selic)の引き下げ余地にも言及した。
一方、ブラジル中央銀行(BC)は「金利はなお制限的水準にあり、データ分析にはさらなる時間が必要」との見解を維持している。
5月の鉱工業生産統計では、月次ベースでの減少が確認されたものの、市場予想の範囲内にとどまった。ASA社のエコノミスト、レオナルド・コスタ氏は「前年同月比では3.3%の増加。2月以降続く緩やかな成長トレンドが維持されている」と評価した。
米国では雇用統計に注目 市場の焦点は景気後退リスクへ
一方、米国では民間部門の雇用者数が6月に予想外の3万3千人減少となり、労働市場の減速が意識されている。投資会社Bairdのロス・メイフィールド氏は「インフレではなく雇用にもっと注目すべき段階」とCNBCに語った。
その米国ではトランプ大統領がベトナムとの新たな貿易協定を発表。「ベトナム市場が米国製品に“関税ゼロ”で開かれる」とSNS上で大文字で強調した。米国側の関税は最大40%で維持されている。
米ニューヨーク株式市場では、こうした動きを受けて主要指数がまちまちの展開に。欧州市場では多くが上昇したが、英国・ロンドン市場ではブラジル同様、政治不安が重しとなった。
ValeとPetrobrasがIbovespaの下支えに
市況全体は軟調ながら、鉄鉱石価格の上昇を受けてVale(VALE3)が3.64%高と大幅上昇。生産目標の見直しも好感された。Petrobras(PETR4)も国際原油価格の上昇を背景に1.78%高。関連銘柄のPRIO(0.86%高)やBrava(0.92%高)も連れ高した。
Ambev(ABEV3)は5月の生産増を受けて2.02%高、Klabin(KLBN11)も証券会社による投資判断の引き上げで2.87%上昇した。
一方、金融株は軟調で、Bradesco(BBDC4)が1.82%安、Itaú Unibanco(ITUB4)が0.81%安と下落。Banco do Brasil(BBAS3)は0.37%高だったものの、全体ではマイナス寄与となった。
そのほか、Natura(NATU3)は新ティッカーでの初取引ながら5.65%安。Magazine Luiza(MGLU3)は6.59%安と大幅下落した。
外国人投資家の資金流入、2023年以来の最高水準に
株式市場の支えとなっているのが、外国人投資家による買い越しである。2025年上半期、Ibovespaは15.44%の上昇と、2016年以来で最も力強いスタートとなった。
Elos Aytaコンサルティングによると、IPOやフォローオンを含めた外国人投資家の純流入額は269億レアルに達し、2023年後半以来の最高額。二次市場(既存株式の売買)のみを見ても、流入額は264.5億レアルと、2022年前半(519.1億)以来の高水準である。
同社CEOのエイナル・リヴェロ氏は「第2四半期の資金流入は、外国人投資家の投資姿勢の転換を示す」と分析。過去14四半期で9回がプラス、5回がマイナスと、グローバルなマクロ要因や政治リスクへの反応が顕著となっている。
ルーラ大統領、「BBB課税」掲げ富裕層への増税訴え
サルヴァドール市で開催されたバイーア州独立記念イベント(7月2日)において、ルーラ大統領は「課税BBB:ビリオネア、バンクス、ベッツ」と書かれたプラカードを掲げ、超富裕層・金融機関・オンライン賭博業者への課税強化を訴えた。
この取り組みは、所得税の非課税枠を月収5千レアルまで拡大する選挙公約を実現するための財源確保策の一環。SNSでは「税の公平性と格差是正が重要」とのメッセージも発信された。
ただし、国会では課税強化に対する抵抗感も強く、前週にはIOF増税に関する政令が議会で覆されるなど、政権の調整力に課題が残る。
この「BBB課税」キャンペーンは、ギリェルメ・ボウロス下院議員ら左派勢力を中心に、国民的議論を巻き起こす狙いで展開されている。