『レジストロ灯籠流し』=伝統行事の歴史と明日描く
日本移民の歴史と地域文化が交差する街、サンパウロ州レジストロで行われる伝統行事「灯籠流し」に迫るポ語新作ドキュメンタリー『Tooro Nagashi de Registro – Do Legado ao Amanhã』(57分、柳生ヴィクトル監督、www.youtube.com/watch?v=_t93PnlImDA)が先月、ユーチューブで公開された。制作は地域放送局Ribeira Plus。
この作品は亡き人々の魂を慰め、子孫と過去をつなぐ灯籠流しの歴史と精神を丁寧に描写する。レジストロではブラジル内で最古かつ最大規模の「灯籠流し」が毎年実施されている。歴史部分は、分かりやすくアニメーションで語られる。10年がかりで撮影されたため、リベイラ河沿岸日系団体連合会の山村敏明会長、レジストロ日伯文化協会の金子国栄会長ら懐かしい故人が生き生きと語る姿も見られる。
冒頭は川面に揺れる光のランタンがゆったりと映し出され、静けさと哀愁が漂う。参加者や世代を超えた信者たちの声が挿入され、「自分たちのルーツはここにある」と語る場面が胸を打つ。レジストロ文協や地元アーティストの協力を得て、文化の継承と共同体のつながりを強調する。
灯籠流しは日系社会のみならず、地域社会全体に根づく文化祭のような役割も担ってきた。映像を通じて心の中で炎を灯し続ける人々の静かな誇りが伝わってくる。
副題「Do Legado ao Amanhã=遺産から明日へ」に込められた通り、本作は過去を回顧しながら次世代への希望を灯す。都市化やグローバル化で失われつつある伝統行事の意義を再確認し、若い世代にどう受け継いでいくかを問いかける。
精神性と共同体のつながりを問い直す本作は、地域ドキュメンタリーとしてだけでなく、日本移民文化研究の観点からも貴重な記録だ。ユーチューブ配信によって広く視聴可能となった。
柳生監督は「この映画の制作に参加してくれた全ての人に深く感謝。多くの世代の感情、記憶、アイデンティティを受け継ぐイベントを記録できて光栄です。裏方として働いてくれたメンバー全員、惜しみなく話を聞かせてくれた取材対象者、灯籠流しの炎を絶やさずにいてくれる全ての人に感謝!」とコメント。日系社会の記憶と未来への祈りが交錯する光景が、静かに心に残る一作だ。
ポ語だが、ユーチューブの設定を「字幕」にしてポ語自動生成、日本語に自動翻訳をすれば大筋の意味は分かる。