駐在員リレーエッセイ=第3回=日伯文化融合の最適解求めて=相場 洋志さん

ブラジル日報読者の皆様、こんにちは。TOYOBO DO BRASIL PRODUTOS BIOLÓGICOS LTDA.の副社長を務めます、相場洋志と申します。弊社は日本の東洋紡株式会社傘下の在伯法人である東洋紡ブラジルグループの中で、バイオ分野の事業を担う会社です。事業内容は主に二つです。
一つは酵素事業で、ブラジル産の農作物から酵素を抽出・精製して臨床診断薬の原料としています。この酵素は、コレステロール、中性脂肪、クレアチニンといった生化学検査に使われる診断薬の有効成分で、ブラジル産の原料が最終的には世界各国に供給されています。
もう一つは農業事業で、生物農薬の製造を行っています。我々が製造しているものは、農作物の害虫に感染し駆除する機能を有するカビの胞子を有効成分とするものです。この生物農薬は、従来の化学農薬と異なり環境中に長期残留しないため、エコフレンドリーな次世代農薬として近年注目を集めています。
さて、私は2024年の10月にブラジルに赴任し、はや1年が経過しました。言葉の壁には苦しんでいますが、ここは人も気候も温かく、馴染むのに時間はかからなかったように思います。
こちらに赴任して、まず趣味のマラソンを大いに楽しんでいます。私の住むサンパウロ州インダイアツーバの近郊でも毎週どこかで大会が開催されています。おおよそ月1回のペースで5Kmからハーフマラソンに至る様々な距離のレースに参加しています。こちらはランニングクラブの活動が盛んで、大会会場には各クラブのテントが所狭しと多数並び、仲間を支援します。
私のポルトガル語の先生がマラソンをされる方で、その先生が所属するインダイアツーバの走友会の方々とも交流させて頂きました。各地の大会に参加することで色々な土地をめぐり、違った風景や雰囲気に触れられるのも楽しみのひとつです。
また、私は4歳から空手を習い始め、大学卒業まで修練を続けました。特に大学時代は体育会空手部の主将を務め、国体強化選手に選出されたりもして、青春時代の大半を空手に費やしました。大学卒業以来は遠のきましたが、海外に赴任すると、どうしても空手が私のアイデンティティーの一つとして意識されます。過去米国駐在時代には現地の道場に通い、子供たちを指導したりもしました。

先日、観光でレンソイスを訪れたときにふと思い立って、エメラルドグリーンの湖を背景に空手の形を演じて動画に収めました。これをSNSに上げたところ、思いのほか反応がよく、それ以来どこか観光に行く際には空手の形を動画に収めるのが恒例となりました。
マナウスに行った際は桟橋のレストランで大河をバックに行ったのですが、このときは人が多く、多くの方の奇異の目に晒されて恥ずかしくもありました。いずれ空手でも現地の方と交流ができたらなあ、と思う次第です。
最後になりますが、会社運営の中で、日系企業ですので本国からは日本的な考え方や管理体制を求められる一方、ブラジルには現地独特の文化があります。どちらかに偏るのではなく、それらの融合の最適解を見出し実現することがブラジル社会の中での日系企業の強みとなる、そう信じてまい進する日々です。