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米、コロンビア支援を停止=モンロー主義2・0に南米反発

2025年10月22日

万華鏡1
コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領(左)と米国のドナルド・トランプ大統領(右)(21日付ジアリオ・ド・セントロ・ド・ムンド・サイトの記事の一部)

トランプ米大統領は19日、ベネズエラに続き、コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領を「麻薬密売組織のリーダー」と非難し、同国への経済支援を全面停止すると発表。米国はカリブ海地域に80年代末以来で最大規模の軍事展開を進めており、ベネズエラにはCIAを含む軍事的圧力を強めている。この動きは中南米における米国の影響力回復を狙った戦略「モンロー主義2・0」と呼ばれていると21日付オ・グローボ紙など(1)(2)が報じた。

トランプ氏の強硬発言は、カリブ海地域で米軍が大規模展開する最中に出た。今回は1989年のパナマ侵攻以来の規模で、麻薬取締り作戦の名目だが、専門家はより広範な地域戦略の一環と指摘する。

コロンビアのアルマンド・ベネデッティ内相は、トランプ発言を軍事的な地上介入や侵攻の脅威と受け止め、外交的対応として駐米大使を呼び戻す決定を下した。

トランプ氏は、ペトロ氏をベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領に準じて麻薬密売の首謀者と断じ、米国が支援資金をするにも関わらず、組織犯罪を取り締まらないと批判。ペトロ政権が麻薬栽培地を閉鎖しない場合、米国が強制的にこれを実施するとも警告した。

米軍は麻薬密輸船とみなす7隻を撃沈し、32人を死亡させた。米政府はこれをテロ組織同様に扱っており、トランプ政権はマドゥロ政権に対してCIA秘密作戦の実施を公に認めている。コロンビアには2000年以降に約140億ドルに及ぶ米国からの援助が行われてきたが、今回その支援を全面停止することで、従来の〝最重要同盟国〟関係が急速に変質しつつある。

ワシントンの動きは、伝統的なソフトパワー政策を縮小し、軍事的圧力と経済制裁を強化する「モンロー主義2・0」と称されている。モンロー主義とは、1823年に米国の第5代大統領ジェームズ・モンローが打ち出した外交原則で「欧州諸国は米大陸に干渉すべきでない」と主張し、米国が西半球の秩序を主導するという内容を含む。冷戦期以降、米国はこの原則を背景に中南米への影響力行使を正当化してきた。

米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の分析によれば、トランプ政権は冷戦期以降で最も積極的に中南米関与を強めている。軍事力行使や威嚇増大と、関税措置を通じた圧力強化を同時に進めている。背景には、中国の中南米カリブ地域での影響力拡大や、組織犯罪、過去最大規模の移民流入などが、米国の安全保障を脅かす事態と認識されていることがある。

米国と長年の同盟国であるコロンビアは、ペトロ大統領の誕生とともに緊張が高まっている。米国はこれまで、同国の軍隊に対し、訓練や情報共有、航空機の提供を行い、犯罪組織に対する共同作戦も展開してきた。だが、ペトロ政権は米国の介入主義的政策に批判的姿勢を示している。

トランプ氏は政治的盟友として、亜国のハビエル・ミレイ政権やエルサルバドルのナジブ・ブケレ政権などの南米の右派政権を重用する一方で、ペトロ氏を元ゲリラ出身の左派指導者として強く非難し、ツイッターや自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」上で人格攻撃を繰り返す。これに対し、ペトロ氏は米国の軍事的圧力や隣国ベネズエラに対する介入を非難し、米軍は無関係な船員を殺害していると国際司法の場に訴える構えだ。

米軍のカリブ海地域展開は、国際的な麻薬密輸組織の主要ルートを封鎖するのが目的と言われ、トランプ政権がテロリスト指定した、ベネズエラの「カルテル・デ・ロス・ソレス」や「トレン・デ・アラグア」等の組織を主な標的としている。

一方で、コロンビアとトリニダード・トバゴ両国は、米軍の作戦により自国民が犠牲になったと非難している。米国はこれを否定しつつも、攻撃対象はコロンビアの反政府極左武装組織「民族解放軍(ELN)」に属すると主張している。

国連によると、コロンビアは24年、コカイン生産量で過去最高を記録したが、同国政府はこれを「調査方法に誤りがある」として否定。米国の軍事作戦が焦点を当てるのは、太平洋岸を経由する主要ルートではなく、カリブ海経由の二次的ルートだとの指摘もあり、専門家はこの軍事的アプローチの効果と合法性に疑問を呈している。

米国が国際法の枠を超えて行動しているとの批判がブラジルを含めた中南米でも強まっており、コロンビアら複数の国は国際司法や多国間枠組みによる調査を求めている。


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