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路上生活者、6年で9割増=コロナの爪痕と難民流入で

2026年1月17日

万華鏡2
路上生活者たち(Foto: José Cruz/Agência Brasil)

ブラジルで路上生活者が急増している。ミナス・ジェライス連邦大学(UFMG)傘下の「ブラジル・ホームレス人口公共政策観測所(OBPopRua)」は13日、全国の路上生活者2020年からの6年間で、19万4824人から36万5822人2025年末時点)に約88%増えたとの調査結果を公表した。新型コロナウイルス禍後の社会・経済的影響に加え、住宅や雇用をめぐる公共政策の不十分さが背景にあると分析している。(1)2

調査は、低所得層や社会的弱者を対象とする連邦政府の社会支援制度「統一登録システム(CadUnico)」のデータを基に実施された。登録制度の拡充により、これまで統計に十分反映されてこなかった路上生活者の把握が進んだ面もあるという。2024年12月時点では32万7925人だったが、わずか1年で約3万8千人増加した。

地域別では南東部が突出して多く、22万2311人と全国の61%を占めた。経済の中心地である一方、都市への人口集中と住宅不足が深刻化している実態が浮かぶ。北東部は5万4801人。州別ではサンパウロ州が15万958人で最多となり、リオデジャネイロ州(3万3656人)、ミナス・ジェライス州(3万3139人)が続いた。最少は北部アマパ州の292人だった。

OBPopRuaの研究者らは、増加要因として、長年の住宅政策の遅れや雇用の不安定化を挙げる。パンデミック後の物価上昇や失業、非正規雇用の拡大が、もともと脆弱な立場にあった人々の生活を直撃したとみる。また、気候変動による地域経済への影響や、中南米、とりわけベネズエラから数十万人も流入した難民も都市部の路上生活者増に拍車をかけたと分析している。

UFMGのアンドレ・ルイス・フレイタス・ジアス教授は、路上生活者の人種的偏りにも言及する。「全国平均で10人に7人が黒人だ。社会的格差の影響を強く受けてきた人々が、パンデミックによってさらに追い込まれ、その影響はいまも続いている」と指摘する。

一方、サンパウロ市は調査結果に異議を唱える。市が2021年に実施した独自の「ホームレス人口センサス」では、市内の路上生活者は約3万2千人とされ、OBPopRuaの推計とは開きがある。市は約370の支援施設を運営し、2万7千人分以上の避難所空室を確保していると説明。今年3月から新たな実地調査を始め、年末までに結果を公表する予定だ。

州政府も対策を急ぐ。サンパウロ州は市と連携し、路上生活者対策として6億3300万レアルを拠出。このうち1億4560万レアルを専用施設の整備に充てるほか、低価格で食事を提供する「ボン・プラット」食堂を24カ所新設した。薬物依存症を抱える路上生活者向けの居住型療養支援サービスも拡充している。

ただ、当事者団体からは、施策が対症療法にとどまっているとの声も出る。「サンパウロ州ホームレス運動」のロブソン・セーザル・コレイア・デ・メンドンサ氏は、技術革新や労働市場の構造変化が低技能層の排除を進めていると指摘する。「教育や職業訓練、再就職支援を含む包括的な政策がなければ、路上生活からの自立は難しい」。経済成長の陰で拡大する貧困と向き合う姿勢が、いま改めて問われている。


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