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JICA研修で歌舞伎講演=本紙連載中の青木夕実さん=「南米の方に歌舞伎を伝えたい」

2026年1月23日

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 国際協力機構(JICA)の研修事業「日本文化活動コーディネーター育成(応用)」が、昨年11月9日から12月18日まで実施された。その一環として11月29日、東京・銀座の歌舞伎座近くの会議室で、「歌舞伎の歴史・成り立ち」をテーマにした講演が開かれた。講師を務めたのは、歌舞伎役者・大谷廣松(おおたに・ひろまつ)の妻で、本紙で「梨園の妻になった日系3世」を連載中の青木夕実さん。この日は夫が休演日だったこともあり、講演に同行し、研修生からの質問に直接答える場面も見られた。

 これは、日系団体でイベントの企画運営や運営責任を担う人材を対象としたもので、ブラジル3人を含む中南米6カ国から計8人が参加した。日本文化を軸に、地域社会とどのように関わり、発信していくかを実践的に学ぶ研修だ。

 青木さんは冒頭、歌舞伎がユネスコの無形文化遺産に登録されていることを紹介した上で、その起源が1603年、出雲の阿国による京都・四条河原での踊りにあることを解説した。「当初の歌舞伎は女性が担い、型破りで自由な表現だった」と語り、やがて遊女歌舞伎、若衆歌舞伎を経て、風紀上の理由から成人男性のみが演じる「野郎歌舞伎」へと移行していく歴史をたどった。男性が女性を演じる女方の美意識が、そうした過程で確立されたことも、図版を交えて説明した。

 後半では、歌舞伎を特徴づける「型」と「家」の文化に話題が及んだ。歌舞伎の世界では世襲を基本とし、名跡の襲名とともに演技や所作の型が受け継がれていく。青木さんは、浮世絵師・写楽が描いた大谷鬼次と自身の夫の家系との縁を紹介しながら、家紋が衣装や小道具、楽屋道具にまで用いられていることを説明。重さが数十キロに及ぶ衣装やかつらの実例に、参加者からは驚きの声が上がった。

 また、市川團十郎が生み出した荒事の様式や、隈取、見得といった誇張表現が、現代の漫画やアニメの表現にも通じている点に触れ、「伝統は過去のものではなく、今につながっている」と強調した。

 講演後、研修生からは「自国での日本文化イベントに新たな視点を持ち帰りたい」といった声が相次いだ。歌舞伎という一つの芸能を通じ、日本文化をいかに伝え、地域と結び直すか。研修の狙いを象徴する時間となった。

 この後、青木さんは歌舞伎座の背後に建つ歌舞伎タワー4階の回廊を案内し、歴代歌舞伎座の模型や、往年の役者の写真などを紹介した。

 青木さんは本紙の取材に対し、「歌舞伎初心者の私で務まるのか不安もありましたが、南米文化の中で育ってきた私ならではの視点から、日本の伝統芸能をお話ししました」と振り返る。日本人観客にも初心者が多いことから、役者が直接、歌舞伎の見方や楽しみ方を伝える会を開くこともあるというが、「そうした場では質問がほとんど出ません。ところが今回は、質疑応答だけで1時間半に及びました。研修生の皆さんの熱意に、うれしい驚きを感じました」と語った。

 最後に「少しずつでも、ブラジルや南米の方々に歌舞伎を伝える夢が形になっていくのがうれしい」と、笑顔を見せた。この研修は、JICAが進める日系社会研修事業の一環として、海外日系人協会が実施した。


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