サンパウロ市公立校に日本文化の種を=「Descobrindo o Japão」5周年表彰式
JICAサンパウロ帰国研修員同窓会(ABJICA、ナンシー・ベナンシオ会長)らが取り組む教育福祉事業「Descobrindo o Japão」の開始5周年を記念するボランティア表彰式が3月7日、サンパウロ市の青森県人会会館で行われた。コーディネーターの今井恵美氏の呼びかけで始まったこの事業は、単なる文化紹介の域を超え、公立教育に新たな光を当てている。
式典では、今井さんが始まった経緯とこれまでの成果を振り返った。2021年、パンデミックの教育現場は閉塞感に喘ぎ、生徒たちの間には鬱病や孤独感が蔓延していた。
今井氏らはオンラインでのワークショップを強行。教育委員会を通じて「折り紙」や、自身の名前を美しく綴るための「ひらがなキット」を配布。学校へ教材を取りに来る保護者たちの献身的な協力もあり、自宅で日本文化に触れる時間は、孤立していた子供たちの「精神的支柱」となった。最悪の時期に灯された文化の火は、絶望の淵にあった生徒たちの心を繋ぎ止めた。
活動開始から5年、マジョール・アルシー校などの公立校で学んだ生徒数は560人を超えた。その教育内容は多岐にわたる。剣道を通じた「礼儀」や「レジリエンス(回復力)」の育成、将棋や書道、清掃の規律に至るまで、日本的な哲学が深く刻まれている。
特筆すべきは、金融界で40年のキャリアを持つ今井氏ならではの視点だ。家庭の主婦が知恵を絞る「カケイボ(家計簿)」や、日々の生活を向上させる「カイゼン(改善)」といった日本独自の生活美学を伝授した。これらは現地校の「プロジェクト・デ・ヴィーダ(人生設計)」という授業枠に統合され、困難な環境にある生徒たちが自らの未来を切り拓くための実践的な知恵として高く評価されている。
教壇に立つのは日本で研鑽を積んだ元JICA研修員で、山田レジーナさんは「活動を通じて自らのルーツに再会できた」と語り、日本で学んだ規律を伝えることで、子供たちの瞳に好奇心の光が宿る瞬間に立ち会える喜びを強調した。日系社会が培ってきた価値観が、日系ではない子供へも受け継がれていく過程は多文化共生の理想的な姿と言えよう。
ベナンシオ会長は「教育を通じた社会貢献は、研修員たちの使命」と語り、専用口座を設けて透明性の高い運営を徹底し、さらなる支援を呼びかけた。
JICAやJCI(国際青年会議所)などの協力も得て、この草の根の活動は確固たる社会的基盤を築こうとしている。当日の様子は動画(https://youtu.be/tT86TZ-Q-bg?si=hcLb1IBEKFLJjSBQ)で公開中。









