アルゼンチンの新大統領ハビエル・ミレイ氏は連邦議会に広範で過激な改革案を提案する一方、2025年まで緊急事態宣言をする法案まで出し、議論を巻き起こしている。緊急事態宣言が認められれば、政権の権限が大幅に強化され、議会承認を得ずに暫定令で政策が実行できる。その一方で国民の70%以上がミレイ氏の改革を支持していると2023年12月29日付ヴェージャ紙など(1)(2)が報じた。
ミレイ大統領は極端な自由主義の立場から、国を大胆に変革することを公約して当選した。それを実行するべく、12月27日に議会に提出された「アルゼンチン人の自由の基盤と出発点に関する法律」と題された提案書には、経済、財政、税金、年金、行政、社会、安全保障、国防、料金、エネルギー、健康などの広範囲における改革が含まれ、664条352ページにわたる。
同文書には12月20日に発表された経済規制緩和パッケージである緊急政令(DUN)「2925年12月31日までの経済、財政、財政、社会保障、安全保障、防衛、関税、エネルギー、健康、行政および社会問題における」非常事態宣言の承認も含まれている。
ミレイ大統領は国民投票や住民投票にも言及しているが、まずはこの法案が議会で承認される必要がある。だが、与党議員は少数であり、今後の成り行きはかなり不透明だ。
民営化が提案されている国営企業だけでも41社あり、その中には石油会社のYPF、アルゼンチン航空、ブラジル銀行に相当するナシオン銀行も含まれ、労働組合や左派党から猛烈に反発する声が上がっている。
ミレイ政権は勤続1年未満の公務員との契約を更新しない方針を示しており、約7千人が影響を受ける見込みだ。これに対する反発や抗議が国内で広がり、全国労働者協会(ATE)は全面ストライキを脅威している。
一方で、現地のコンサルタント会社ズバン・コルドバの調査によれば、アルゼンチン人の78・8%は財政調整が自分たちに悪影響を及ぼすと考えている一方で、71・3%が政府の緊急措置を支持し、経済の改善を期待する声も上がっている。
ただし、この支持には、次の期限内に効果を表すとの期待が込められている。25・4%は1~2カ月以内に経済にプラスの結果が得られると予想しており、29・6%は2〜6カ月、28%は6カ月〜1年と答えている。これが過ぎた時、支持率がどうなるかが不安要素だ。
その他の政府見解では公共テレビと国営ラジオの民営化(賛成47・1%、反対41%)、省庁数の削減(賛成55・3%、反対21・3%)、労働制度改革(賛成40%、反対35・9%)などが国民の支持を得ている。
12月末から第一弾の規制緩和措置が施行され始め、クレジットカード、家賃、医療費の処方、携帯電話口座への入金による給与支払い、自動車売買など、日常生活のあらゆる分野に影響を及ぼし始めている。
ミレイ大統領は「最初は今より経済状態がひどくなる」と繰り返し表明しており、国民がどこまでそれに耐えられるかが問われている。