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漁網に絡まったクジラ救出=善意の介入も当局が違反調査

2025年7月16日

 サーフボードに乗った一人の男性が漁網に絡まった巨大なクジラを解放救出した。その動画はSNS上で瞬時に拡散され、多数の称賛を集めている。だが、その善意による行動が環境保護法規に抵触する可能性があるとして、管轄当局による厳正な調査が進められていると14日付G1など(1)(2)(3)が報じた。

 問題の事案は12日、南部サンタカタリーナ州フロリアノポリス大都市圏パリョッサ市の海域で発生。SNSに投稿された映像には、母子とみられる2頭のミナミセミクジラのうち、母クジラに絡まっていた漁網を、男性がサーフボードに乗って接近し、パドルで取り除く様子が記録されている。当該投稿は再生回数8万回超、コメント数500件以上を集め、その大半が男性の行動を称賛する内容で占められていた。

 だが、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)は、許可を受けた専門機関によらない鯨類への直接介入は認められておらず、当該行動が法令に違反している可能性があると調査を開始したことを明らかにした。

男性が網に絡まったクジラを救い出す様子(Foto: Redes sociais/ Reprodução)

 Ibamaによれば、大型鯨類に絡まった漁網を除去する作業は高度な危険を伴う行為であり、適切な訓練、専用の機材、法的な許可が必要とされている。ブラジルにおいては、同院が施行する省令により厳格に規定されており、動物および介入者の双方の安全確保が最優先とされる。

 当該のクジラは10日、ミナミセミクジラのモニタリングを行う研究団体「ProFRANCA」によって、網に絡まった状態で初めて確認されており、その後も継続的に監視されていた。同団体によれば網は母クジラの頭部にある「カラシティ(角質性の隆起)」の周辺に軽度に引っかかっている程度で、母子の行動には異常は見られなかったという。

 Ibamaのパウロ・マウエス同州支部長は、専門家による技術的評価の結果、母クジラに絡まった網は授乳や子クジラの保護といった自然行動を妨げておらず、網が自然に脱落するのを待つことが最も安全な対応策だと判断されたと説明。だから当局と関連機関は積極的介入を行わず、静観する方針をとったという。

 ProFRANCAによれば、今回のような漁網の一部が鯨体に絡まる事例は、同地域沿岸では比較的頻繁に発生しているという。同団体のエドゥアルド・ルノー=ブラガ氏は、「多くの場合、クジラは自力で網を引きちぎり、解放されている。特にカラシティとの摩擦により、網が破断することが多い」と説明している。

 長時間の静止や緩やかな遊泳をしていた今回のクジラの行動も、繁殖期に一般的に見られる行動様式と一致しており、異常は認められていなかったという。

 動画撮影を行った写真家のカルロス・アンセルモ氏は「我々はこの3日間、危機的状況にあるミナミセミクジラの状況を見守っていたが、行動を起こす必要があった。網の除去作業は、専門知識と訓練を受けた者が、関係者全員の安全を最優先に慎重を期して実施した」とコメントしている。


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