《ブラジル》4大司法機関でボルソナロに不利な長官交代=選挙高裁には天敵モラエス氏=最高裁や高等裁、TCUでも

1日から最高裁が2022年度の審理を再開した。大統領選が行われる今年は、選挙高裁や最高裁などで、ボルソナロ大統領にとっては不利な交代人事が行われるため、同氏にとって苦しい展開になると、1日付フォーリャ紙などが報じている。
2022年は最高裁や選挙高裁、連邦高等裁(STJ)、連邦会計検査院(TCU)といった大きな司法機関で長官が交代するが、いずれの機関でも、ボルソナロ大統領は厳しい対応に迫られると見られている。
中でも最も大きなものが選挙高裁だ。それは、現在長官を務めているエジソン・ファキン氏の任期が8月17日までで、最高裁判事でもあるアレッシャンドレ・デ・モラエス氏が後任長官に就任し、10月の大統領選の指揮をとることになっているからだ。
大統領支持者の間では、モラエス判事は最高裁内で最強の敵対者ととらえられている。両者の間の緊迫した関係は、大統領が新型コロナのパンデミックに対する外出自粛政策に強硬に反対していた20年4月に、モラエス判事が「コロナ対策を決断するのは州や市」との判断を下した時から始まっている。
モラエス判事はその後、最高裁内で「フェイクニュース捜査」「反民主義的捜査」の二つを担当。その過程で、熱心な大統領支持者として知られるダニエル・シルヴェイラ下議と、ブラジル労働党党首のロベルト・ジェフェルソン氏の2人をネット上での過激な言動を理由に逮捕。
それもあり、昨年9月7日に大統領が煽った最高裁への抗議行動の際に最大の攻撃対象になったのが、モラエス判事だった。
同判事と大統領の間の緊迫関係は今も続いており、1月28日には、選挙高裁へのハッキング攻撃に関する連邦警察の捜査内容を大統領が入手、漏洩したことについて、連警で証言を行うようモラエス判事が命じたのに、大統領が拒否。この問題もまだ続きそうだ。
他方、最高裁では、ルイス・フクス長官の任期が8月までで、後任にはローザ・ウェベル判事が昇格する。
ローザ判事は最高裁でも政治色が薄く、憲法最尊重の判断を行うことで知られているが、ボルソナロ氏や連邦政府のコロナ対策に関しては厳しい言動が目立ち、厳格な判断もしばしば行っている。
これまでの最高裁とボルソナロ大統領との関係はジアス・トフォリ氏のときが最も良好で、フクス氏は時折対立しながらも、直接的な対立は避けていた。
STJはボルソナロ氏長男フラヴィオ上議のラシャジーニャ疑惑の裁判などで有利な判決を出してきたが、親大統領派のウンベルト・マルチンス長官の任期が切れ、STJ内きっての独立派とされるマリア・テレーザ・デ・アシス・モウラ判事が後任となる。
TCUでも、大統領に対してかねてから苦言の多いブルーノ・ダンタス判事が、7月に定年となるアナ・アラエス長官の後任に昇格する。ただ、TCUは連邦議会とのつながりが強いため、議会とのパイプ役としてダンタス判事とも良好な関係を築いているシロ・ノゲイラ官房長官が、緊張を和らげる鍵になると見られている。