《ブラジル》ボルソナロ=先住民保護区の外に潤沢な鉱床=肥料に関する大統領の二枚舌発覚=ウクライナ危機を意図的に悪用?

【既報関連】ロシアによるウクライナ侵攻で肥料供給への懸念がにわかに高まった事を受け、ボルソナロ政権は3月中に国家肥料生産計画を発表すると約束し、そのために必要な先住民保護区での鉱物採掘を合法化する法案の審議を急がせようとしていた。その矢先、大統領が保護区開発を正当化しようとして主張していたカリウム鉱床は大半が保護区外にある事が判明し、大統領への批判が高まったと7~9日付現地紙、サイトが報じた。
ボルソナロ氏は18年の大統領選で当選した直後から、世界的な食糧供給の安全性確保や先住民も富む必要があるなどの理由で、法定アマゾンの開発や先住民保護区での鉱物採掘を擁護する発言を繰り返しており、国際的な批判も浴びてきた。
だが、ロシアによるウクライナ軍事侵攻で肥料供給への懸念が急浮上し、先住民保護区での鉱物採掘を合法化する法案審議を加速化すべきとの機運が生じた。
大統領は特に、先住民保護区にはブラジルでは決定的に不足しているカリウム鉱床があるとして、保護区開発を早急に合法化すべきと強調。これを受け、アルトゥール・リラ下院議長が政党リーダーとの会合開催を決めた7日と開催予定日の8日、カリウム鉱床の多くは先住民保護区外の場所にあるとの調査報告が相次いだ。
その一つは、連邦政府所有のデータをミナス州連邦大学が解析したもの。それによると、先住民保護区にあるカリウム鉱床は全体の11%に過ぎない上、国内にあるカリウムだけで農業部門が2100年まで使うのに十分な量があるという。研究者らはさらに、2089年までは法定アマゾンの域外の鉱床だけで賄えるとも語っている。
8日付エスタード紙も、国家鉱業庁(ANM)のデータにあるカリウム鉱床は大半が先住民保護区の外にあり、先住民保護区の存在が肥料の国内増産を妨げているというボルソナロ氏の主張は詭弁と報じた。
ボルソナロ氏は都合のよい部分だけを取り上げ、情報全体をゆがめる形で拡散することを繰り返しており、最高裁がサイバー攻撃も含めたデジタル犯罪関連の捜査を命じて久しい。
下院政府リーダーリカルド・バロス下議(進歩党)は9日も、先の法案を直接本会議に持ち込むための交渉を継続中だが、下議の中からはあからさまに「大統領がウクライナ危機を使って嘘をついた」と批判する声も出ている。