《ブラジル》軍関係者にペトロブラス総裁擁護の動き=大統領や議会の不満高まる中=市場や投資家への影響は?

燃料代の大幅値上げでボルソナロ大統領や連邦議会がペトロブラスに批判的な態度を示す中、軍関係者が軍出身のジョアキン・シウヴァ・エ・ルナ総裁の擁護に動いている。14、15日付現地紙、サイトが報じている。
ガソリンで約19%、ディーゼル油で約25%、液化プロパンガス(LPG)も約16%という値上げ発表前から、ボルソナロ氏は同公社批判を繰り返してきた。一例は値上げ直前の7日で、同社の価格政策を批判し、「連邦政府内で対策会議を行う」と発言し、違憲行為である同公社への介入を匂わせた。これで同社株は7%も暴落した。
ボルソナロ氏は値上げ発表直後の10日も「介入できるものならしたい」と発言。12日も、「大統領と副大統領以外はどの役職も交代可能だ」との表現でシウヴァ・エ・ルナ総裁に圧力をかけ、物議を醸した。検察は大統領の介入疑惑で連邦会計検査院(TCU)に捜査を依頼済みだ。
値上げ批判は大統領だけではない。ロドリゴ・パシェコ上院議長も14日、「国民が生活難に苦しんでいる最中にあのような高収益を上げたのはおかしい」として同公社を批判した。
燃料費は21年に10%超の年間インフレ率を記録した最大要因のひとつだが、ペトロブラスは同年、1億6600万レアルの純利益を上げている。
連邦議会は10、11日に商品流通サービス流通税(ICMS)引き上げを抑制して燃料費高騰の影響を緩和する法案を承認。同法案は11日に裁可されて、発効している。
こうした大統領や連邦議会の動きに対し、軍部が現役大将でもあるシウヴァ・エ・ルナ総裁擁護に動いている。アミウトン・モウロン副大統領は14日、「シウヴァ・エ・ルナ氏に圧力をかける動きがあるが、彼は間違ったことはしていない」と発言している。
値上げ前のガソリンやディーゼル油は国際的な原油価格高騰で適正価格との差が30~40%になり、供給不足の可能性も出ていたが、値上げ幅はそれ以下に抑えられた。値上げ要請は株主や投資家たちからも出ていた。
モウロン氏らの軍関係者は連邦政府内で、シウヴァ・エ・ルナ氏の解任阻止や新たな減税法案差し止めに向けたアルチクラソン(政局調整)中だ。彼らはICMS改正で十分とし、それ以上の減税を望まない姿勢を打ち出している。シウヴァ・エ・ルナ氏も14日に「総裁を代えても価格政策は続く」と語り、辞任を否定。値上げ判断の正当性も主張している。
ボルソナロ大統領自身はシウヴァ・エ・ルナ氏の辞任を望み、4月13日の同公社の経営審議会にかけることを願っている。同日は、サッカー・クラブのフラメンゴ会長で大統領が推薦したロドルフォ・ランジン氏の審議会議長就任が審議される予定だ。同審議会は政府側委員が過半数を占めている。
シウヴァ・エ・ルナ氏はイタイプ一双国公社総裁だったが、パウロ・ゲデス経済相に近かったのに価格政策で不評をかった前総裁の後任に選ばれた人物だ。