《ブラジル》バイア州=54年の奴隷労働から開放=虐待、詐欺に苦しんだ日々

バイア州労働検察局が進めている「家庭内での奴隷労働者開放計画」では初年度だけで550人の雇用主を監査し、昨年は前年比で168%増の奴隷労働者を開放・救出したと27、28日付G1サイトなどが報じた。
昨年3月にサルバドール市近郊のラウロ・フレイタス市の家庭から逃げ出し、労働検察に保護されたマダレナ・サンチアゴ・ダ・シルヴァさん(62)もその一人だ。
マダレナさんは54年間、報酬を受け取らず、奴隷労働を強いられていた。また、雇用主やその家族は彼女を虐待した上に、彼女の名前を使って金を借りており、彼女の年金は2万レアルのマイナスとなっていた。
彼女は昨年、応接間に座っていた時に水を入れた器を持った女主人から「この水を顔にかけてやる」と脅され、「かけたければかければ。でも、そんな事をしてもここには残らない」と言い返したため、「可愛げのない黒んぼめ、とっとと出て行け」と言われた。
こうしてマダレナさんは雨降りの土曜日の夜、54年間ただ働きした家庭を離れた。現金も持たず、行くあてもなかったマダレナさんは現在、失業保険と労働検察の計画に沿って受け取る1最低賃金(1212レアル)で暮らしている。
マダレナさんの歩みはレダ・ルシア・ドス・サントスさんとよく似ている。レダさんは9歳から62歳までサルバドール市内の家庭で奴隷労働を強いられ、家から出る事も禁じられていた。殴られそうになると逃げ出しては、女主人から脅されていたという。働いたら賃金をもらえるという事も知らなかった彼女は、労働検察が提供する市立の収容所に住み、1最低賃金を受け取っている。
労働検察が救出した奴隷労働者の中には、州南部サンタルジア市の森林地帯の仮設小屋に住み、動物と同じ水を飲んで暮らしていた、箒用のシュロの繊維をとる職人(ピアサヴェイロ)15人と牛飼い1人の例もある。彼らは非正規労働で、4月18日に救出された後、退職金として5万5千レアルを受け取った。
時間制限もなく、重労働を強いられていた奴隷労働者は農村部に多い。同州で昨年救出された農村部の奴隷動労者70人中53人は、シケ―シケ市で多目的に使われるカルナウバロウという植物の栽培に従事していた。
1995年以降に同州で救出された奴隷労働者は3451人、支払われた退職金は600万レアルに及ぶ。救出された労働者が最も多いのは州西部のサンデジデリオだ。同州はミナス州に次いで奴隷労働者が多い。
奴隷労働を強いていた雇用主は農場経営者が多いが、2017年からは家庭内労働者に奴隷労働を強いていた雇用主摘発も起きている。昨年救出された家庭内労働者は8人で、今年も既に5人が救出された。交代要員もなく、就労時間が不規則な上、時間外手当も払われていない家庭内労働者には、高齢者の介護者が多いという。
奴隷労働をさせていた雇用主は2~8年の実刑判決の対象となりうる。