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《ブラジル》ボルソナロ大統領が鉱山動力相を電撃交代=PBの価格政策批判直後に=後任は経済省戦略特別局長

2022年5月12日

後任のサクシダ鉱動相(Marcello Casal Jr./Agencia Brasil)
後任のサクシダ鉱動相(Marcello Casal Jr./Agencia Brasil)

 ボルソナロ大統領がベント・アルブケルケ鉱山動力相(以下、鉱動相)を電撃解任し、後任にアドルフォ・サクシダ氏を任命、11日付連邦官報に掲載したと11日付現地サイトが報じた。
 鉱動相交代は、ボルソナロ氏が鉱動省傘下の石油公社ペトロブラス(PB)の価格調整を批判した直後に起きた。PBは昨年の収益発表直後からボルソナロ氏の批判の的で、3月に起きた20%近い燃料価格調整後には現政権で2回目の総裁交代も起きた。
 大統領のPB批判は、第1四半期の収益は昨年同期比で3718・4%増の445億6100万レアルだったと発表された5日以降、一層激化。ディーゼル油の出口価格が10日から約9%調整された事が今回の鉱動相交代劇に直結した。
 だが、アルブケルケ氏は11日、退任は個人的な理由で、大統領との合議で決まったと説明。鉱動省からの声明でも「ボルソナロ政権に参加できた事を感謝し、誇りとしている」と述べた。
 後任のサクシダ氏は経済省戦略特別局長で、ゲデス経済相の右腕と目されていた。同氏はブラジリア大学で経済学の博士号取得後、米国アラバマ大学大学院でも学んだ。また、税法専門の弁護士で、応用経済調査院(Ipea)のメンバーだ。
 同氏は任命後、ツイッターで大統領とゲデス氏に謝辞を述べ、アルブケルケ氏の業績を賞賛。「これまでのキャリアの中で最大のチャレンジに誠心誠意を尽くして臨みたい」とも記した。
 鉱動相交代は、ディーゼル油の価格調整で運輸業界からの不満が増している事や、このままでは廃業するしかないというトラック運転手らの声を受けたものといえる。だが、これまでのPB総裁交代劇後も、国際価格と為替の動向を基にガソリンやガス、ディーゼル油の価格調整を行うというPBの価格政策には何の変化も起きていない。
 市場関係者の間からは既に、イメージ悪化などによるエネルギー消耗や政治的な圧力回避のための総裁や大臣交代は実質的な解決にはならず、補助金支出などが必要と指摘する声が出ている。
 連邦政府はインフレ抑制策として、燃料や工業製品、輸入品の税の引き下げや凍結を打ち出しているが、課税率引き下げや免税は国や州、市への税収減だけでなく、国内外または国内の他地域との競争力低下といった問題も引き起こし得る。
 国内他地域との競争力低下の問題は工業製品税(IPI)の割引率を25%から35%に引き上げた時点で起きた、マナウス市のフリーゾーンからの反発が一例だ。輸入品への減税案でも既に、鉄鋼業界などからの反発が出ている。
 統一選前という事で生じる、税負担を減らして支持率を上げたいという意向と新税導入などへの法的制限に伴う財政上の問題との折り合いや、来年以降の健全財政維持という意味での財政改革を考慮せず、首のすげ替えだけに頼るやり方は限界がある。また、PB総裁や閣僚の任命は大統領の責任で、PBへの批判やインフレ高進の責任を負わせた更迭では大統領の責任追及は避けられないとの声も出ている。
 11日には4月の広範囲消費者物価指数(IPCA)が4月としては1996年以来の高率の1・06%、12カ月では12・13%上昇と報じられた。輸送交通は食費に次ぐ1・91%の高率で、燃料は3・20%上昇した。


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