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《ブラジル》ノゲイラ国防相「電子投票信用できない。並行して軍独自で紙投票集計を」=昨年下院での却下事項の蒸し返し

2022年7月16日

ノゲイラ国防相(Jose Cruz/Agencia Brasil)
ノゲイラ国防相(Jose Cruz/Agencia Brasil)

 パウロ・セルジオ・ノゲイラ国防相が14日、上院の公聴会で、公式の電子投票と並行して軍が独自に投票用紙の集計を行うことを提案した。これは実質的な「印刷付電子投票(ヴォト・インプレッソ、VI)」で、ボルソナロ大統領が熱望したものの下院で却下されたものだ。15日付現地紙が報じている。
 かねてから「軍による選挙監視」を主張する前陸軍司令官のノゲイラ国防相による提案は、政府派のエドゥアルド・ジロン上議(ポデモス)の要請で開かれた上院での公聴会の席で行われた。同国防相はここで、選挙高裁が主張する電子投票の安全性について「保証できるものではない」との見解を述べた。
 選挙高裁は、電子投票機は最新のセキュリティ・システムで作られていると説明し、外部からの攻撃に強いと主張している。だが、同国防相は「インターネットにつないでいないから、外国など外からのサイバー攻撃は難しいが、内部での攻撃、改ざんへの安全性は保証できない」と語った。
 ノゲイラ国防相はそこで、「少し修正案を提案したい。選挙高裁は選挙当日も地域選挙裁で投票機のテストを行う方針だが、このほうほうだと投票機が特定されており、従来通りのやり方に過ぎない。我々は外部で並行して行う紙投票を提案したい」と主張した。
 この発言は早速、物議を醸した。指紋で本人確認し、電子投票を行うだけでなく、紙と電子投票機で並行して投票を行い、結果を確認するやり方は、ボルソナロ氏がこだわったVIと同じためだ。選挙高裁は2002年にこの方法に関するテストを行っており、安全性に関しては通常の電子投票との差が認められなかった上、導入に莫大な費用がかかることも選挙高裁から説明されていた。昨年の下院での導入却下も、このテスト結果に基づいてのものだった。
 しかも、ノゲイラ氏が提案するやり方だと、投票用氏と電子投票機が分離しているため、本人確認の作業の時間や立ち会う管理者増員の経費がかかる上に、投票内容が正確に打ち込まれたかを確認ができるか否かの保証もない。
 また、選挙に関する憲法改正は選挙実施の1年前には承認されていなければならず、この提案はその点でも受け入れられるとは考えにくい。
 電子投票の安全性は前長官のルイス・ロベルト・バローゾ最高裁判事の頃から強く主張され、現長官のエジソン・ファキン最高裁判事は軍の選挙監視を干渉行為として否定。8月16日に長官に就任するアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事は最高裁でネット犯罪者捜査を担当しており、電子投票に関する虚報を流すボルソナロ大統領やその支持者に対し、最も厳しいことで有名だ。
 また、親ボルソナロ派とされるアルトゥール・リラ下院議長やアウグスト・アラス連邦検察庁長官も、投票問題に関しては選挙高裁を支持し続けている。
 ノゲイラ国防相はこの他にも「投票機のテストの一般公開」「政党代表らによる監視」などを提案している。同氏は「これは政治的な見地によるものではない」と、公聴会で主張した。だが、これらの提案は、同相がボルソナロ大統領と会った後に行われたことも指摘されている。


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