《ブラジル》国勢調査=キロンボでの調査を開始=国レベルでの統計は初めて

地理統計院(IBGE)が17日、奴隷解放された黒人やその子孫の集団居住地である「キロンボ」での国勢調査を開始したと同日付アジェンシア・ブラジルなどが報じた。
IBGEによると、キロンボ住民の数や生活状況などが具体的に調査されるのは初めてだ。全国のキロンボは5972カ所とされており、「キロンボの国勢調査の日」に制定された17日は、午前9時を合図に、調査員達が一斉にキロンボに入った。
伝統的な部族やコミュニティでの国勢調査のコーディネーターのマルタ・アントゥーネス氏は、「キロンボがいくつあり、どこでどんな生活をしているかを調べるのは初めてだから、キロンボの住民も自分達のコミュニティに関する初めての国勢調査である事を知っている事が大切」と強調した。
同氏によると、17日をキロンボの国勢調査の日としたのは、キロンボのリーダー達が国勢調査のためにコミュニティを開放して調査員を受け入れ、キロンボの実態を知る事の大切さを理解するためだ。それと同時に、今回の国勢調査では、伝統的な部族やコニュミティについても詳細な調査を行おうとしている事をより広く知ってもらう事も考えているという。
キロンボに関する実態は、肌の色に関する質問に続き、「あなたは自分がキロンボの住民だと考えていますか」と尋ねる事で始まる。この質問は肌の色に関する答えとは関係なく行われ、答えが「はい」ならば、「キロンボの名前は何ですか」と尋ねる事になっている。調査員が使う機器にはこれまでにリストアップされていたキロンボの名前が登録されているが、リストにない名前の時は新しく加える事ができる。
アントゥネス氏によると、キロンボに関する調査は初めてで、全ての人に適用できるような質問を用意する事や、キロンボの住民が質問の意味を理解できるようにする事は大きな課題だったという。
情報提供者の安全確保のため、調査員には相手の答えに対する疑問を投げかけたりする事は禁じられており、キロンボの名前は知らない場合など、提供された情報が不十分だった場合も、回答者が提供した情報は修正されない事になっている。
事前にキロンボとして登録されていない場所では、キロンボに関する質問は表示されないため、調査員自身が住所やキロンボである事などを記載しなければならない。
キロンボの存在や住民の権利は1988年制定の憲法にも記載されているが、キロンボに関する全国的な登録システムはないため、今回の調査が貴重な資料となる。
キロンボの調査を担当する調査員には特別な調査の留意点など指導も受けている。今回の調査では、調査員がキロンボ住民ではない場合は、キロンボ住民の言葉や習慣を知っているガイドが同行するなど、細やかな配慮がなされているという。