コロニア東山に巡回診療=高齢1世「本当に助かる」=援協、6月から再開

コロナ禍で中断していたサンパウロ日伯援護協会(援協、税田パウロ清七会長)の巡回診療が、今年6月から3年ぶりに再開した。13日にはサンパウロ市から北に約100km離れたコロニア東山(とうざん)日伯文化協会(大橋エジソン正則会長、以下、コロニア東山)を訪問し、近郊地モジミリンを合わせた約20人を診療した。診療は主に日本語で行われ、ポルトガル語を苦手とする日本人1世からは「やっぱり、来てもらうと助かるよね」と喜ばれていた。今回の巡回診療に同行し、同地での様子などを取材した。
カンピーナス市の東山農場から程近いコロニア東山は1957年に創設され、当初は養鶏やトマト生産で栄えた。しかし、現在は若い世代の9割以上がカンピーナスやスマレーなどの都市部に出て働き、一部が菊などの花卉栽培を行っている状態だ。
現在の家族数は24家族と往時に比べて減少しているが、青少年を対象とした野球・ソフトボールが盛んで、敷地内に公式大会用を含めたグラウンドが3面あり、週末に行われる練習用の設備や宿泊施設も整っている。
この日、率先して巡回診療の準備を手伝っていた佐藤和幸副会長(57、2世)によると、コロニア東山でもここ約2年間はコロナ禍で各種行事を中断し、この日の巡回診療で会員同士が久しぶりに顔を合わせたという。佐藤副会長は「幸い、コロニア東山ではコロナで誰も亡くなっていませんが、若い人たちがコロニアを離れて都市へと出て行く中で、どうやってコロニアを残していくかが、これからの大きな問題です」と話す。
今回、巡回診療のためにサンパウロ市の援協から同地を訪問したのは、同診療班責任者の足立アレシャンドレ氏(専用マイクロバス運転手も兼任)をはじめ、小児科・内科担当医師の荒堀幸子(あらぼり・さちこ)氏、看護師で婦人科と心電図担当の橋元なな美(み)氏、採血担当の角館(かどだて)ネイリ氏、運転手兼検査担当の結城(ゆうき)淳一エジソン氏の5人。
午前8時半頃にコロニア東山に到着した一行は診療準備の後、足立氏があいさつ。「2年間、巡回診療を行っていませんでしたが、これからまた始まりますので、どうぞよろしくお願いいたします。(受診者は)最初に医師に(症状などの)話を聞いてもらってから検査をしていただき、その後に会計での支払いを行ってください」と、受診の流れを説明した。
事前に受付を済ませていた受診者たちは、最初に荒堀医師と橋元看護師に一人ずつ呼ばれて高血圧、糖尿病といった各自の持病や身体の症状等を説明し、その後に血圧測定と血液検査を行った。女性は必要に応じて子宮がん検査を、男性は前立腺検査なども行った。
コロニア東山に住み、菊やアントリウムなどの花卉栽培と不動産業を営む山口定次(さだつぐ)さん(73、山梨県出身)は、「(巡回診療で)こんな所まで来てもらって大変だとは思うけど、我々1世にとっては本当に助かるよね」と喜んだ。
コロニア東山から約50km離れたモジミリンから訪れた坂上(さかうえ)利彦さん(74、北海道出身)は、巡回診療が無かったこの2年は、カンピーナス大学病院の医者に診てもらっていたが、「やっぱり、巡回診療はいいですね」と笑顔を見せた。
コロニア東山婦人部手作りの昼食を食べた後、午後2時半に検診結果が受診者へ伝えられた。荒堀医師は「巡回診療を受けられる方は1世の高齢者がほとんどで、高血圧や糖尿病等の持病を持っている人も多いです。特に男性は血圧が高くても薬だけに頼り、食事で塩分を減らさなかったり、野菜を食べない人もいます。そういう人たちには日頃からの食生活に気をつけるよう注意を促しています」と話した。