《サンパウロ市》アパートのウサギ小屋化進む=45平米以下が76%占める=少子化や物価高騰などで

90年代に日本へ就労に行ったブラジル人の多くは「日本のアパートはウサギ小屋のように狭い」と語っていたが、今ではサンパウロ市でも年々小型化していることが報じられている。生活様式の変化や少子化などで、通勤や通学に便利な駅などに近く、1~4人で住める小型アパートの需要が増えた事は以前から言われていた。
9日付テラ・サイトなどが報じた、通勤時間を減らすために24平米のアパートに住み始めたルアン氏とジル氏夫妻はその一例だ。最初のプランはもう少し違っていたが、資金面などからこの大きさに落ち着いたという。
これらの記事によると、サンパウロ市で現在売り出されているアパートの76%は45平米以下。2021年調査での1寝室のアパートの平均27・5平米は10年前の46・1平米より40%小さい。ブラジル資産調査社(Embraesp)によると、2寝室のアパートの平均も、57・5平米が42・3平米にと小型化している。
アパートの小型化は不動産市場の動向やコスト高、生活様式や家族のサイズの変化などが原因だ。以前はあって当たり前だった洗濯場や事務用空間、台所専用スペース、廊下がなくなり、応接間と台所やサービスエリアなどが統合・共有された。その他、窓の大きさや照明、換気のあり方なども変化している。最近は、洗濯場や台所などを他人と共有する例さえある。
7月15日付G1サイトは、30平米以下の販売物件は1~5月の販売数の22%(5066軒)を占め、2016年の0・8%、30軒から急増中とのサンパウロ商用・住宅不動産売買・賃貸・管理業者組合(Secovi―SP)の情報を掲載。30~45平米の物件も、同期間中に29・1%から50・8%に増えている。
サンパウロ総合大学のジョアン・メイエル教授によると、小型物件はサンパウロ市でも高級住宅地とされる南部や西部の地下鉄や電車、バス通りに近く、住宅街以外の区分地区に多いという。
これらの地区では従来型のアパートに小型のアパートを混ぜたり、小型アパートと商店を組み合わせたビルを建てたりする事で土地の使用区分に合致させているという。
現在はコロナ禍で増えた遠隔勤務者が対面勤務を嫌って退職する例も増加中で、住環境がさらなる変化を遂げる可能性も出ている。