サントス厚生ホーム=新多目的ホールなどお披露目=「見違えるようになりました」=JICA約156万4千レ助成

サンパウロ日伯援護協会(援協、税田パウロ清七会長)傘下の日伯福祉援護協会高齢者施設「サントス厚生ホーム」は8月31日、国際協力機構(JICA)助成による新設備お披露目式をサントス市の同ホームで行った。JICAによる約156万4千レアルの助成により、多目的ホールの新設やソーラーパネル設置等が行われた。

お披露目式には、在サンパウロ日本国総領事館の小室千帆首席領事や、江口雅之JICAブラジル事務所長、サントス市関係者、税田会長、菊地義治評議員会長ら援協役員、入居者とその家族、職員関係者ら約60人が出席した。
挨拶に立った土井セルジオ紀文(のりふみ)運営委員長は、1971年に始まる同ホームの歴史を振り返り、支援を続けてきた日本政府への感謝の気持ちを示すとともに、「コロナ禍の厳しい状況の中で忘れてはならないのは、ボランティアなどたくさんの方々の協力があったこと」と強調した。
同ホームの歴史は71年、サンパウロ市リベルダーデ区の建物を賃貸して生活に困窮する日本人移民を対象にした支援活動を行うところから始まった。74年に「サントス移民の家」としてサントス市に移転。89年にJICAの資金援助を受けて現在の5階建ての施設建造を始め、90年に完成した。
税田会長のあいさつに続いて、祝辞を述べたJICAブラジル事務所の江口所長は厚生ホームに対する日本政府のこれまでの協力の経緯を振り返った上で、「これからもお元気で毎日をお過ごしください」と入居者たちをいたわった。
小室首席領事の祝辞の後、土井運営委員長が施設内を案内し、新多目的ホールで記念プレートを除幕した。江口所長と小室首席領事に、税田会長と入居者から感謝状と記念品が手渡された。さらに、首に赤いスカーフを巻いた約20人の入居者が「みかんの花咲く丘」「上を向いて歩こう」の2曲をコーラスで歌い、お披露目式に花を添えた。引き続き、菊地評議員会長が乾杯の音頭を取り、「乾杯、ビーバ、万歳」と杯を掲げた。
会場には、青木スエリ施設長の両親である青木実(みのる)さん(95、2世)と安子さん(92、熊本県出身)夫妻も姿を見せた。サンパウロ州カフェランジアの平野植民地で生まれた実さんは、サンミゲル・パウリスタ等を経て75年からサンビセンテに住み、厚生ホームにも経営委員として携わるなど貢献してきた。新設された多目的ホールを目の当たりにした安子さんは「見違えるようになりましたね」と喜んでいた。
今は亡き父親の時代から同ホームに協力してきた東京都出身の吉田秀一(ひでかず)さん(77)と幸王(ゆきお)さん(74)の兄弟は、先にブラジルに来ていた長兄の呼び寄せで66年に渡伯。以来、サントス市内で時計店を兄弟で経営していたが、1年半前に閉店したという。秀一さんは「父はカラオケが好きで、生前はよく厚生ホームに遊びに来ていました。私も年に1回行われていた(ブラジル日本アマチュア歌謡連盟の)慈善歌謡大会で司会をさせていただきました」と話し、新多目的ホールで久しぶりに顔を合わせた知人らと歓談していた。
なお、コロナ禍におけるJICAの「施設等整備助成金交付事業」による援協傘下8施設の改修工事お披露目は、今回のサントス厚生ホームが最終となった。
また、援協は同ホームへ非常階段の設置などのため400万レアルを支出し、完成に向けての工事を進めている。