《ブラジル》NYTがモラエス判事の職権乱用疑う=国内での評価とは裏腹に=連警退職者らも捜査要請

最高裁判事で、現在は選挙高裁長官を務めているアレッシャンドレ・デ・モラエス判事が、米国ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)から職権乱用の可能性を疑問視する報道を出された。連邦警察の退職者たちが同様の理由で、連邦検察庁に同判事を捜査するよう求めている。26、27日付現地紙、サイトが報じている。
モラエス判事は2020年に最高裁のフェイクニュース捜査担当となって以来、ボルソナロ大統領や同氏支持者らのネット上の言動や非民主主義扇動を取り締まってきたため、大統領とは強い対立関係にある。昨年9月の独立記念日の際も、大統領は反最高裁デモを煽り、同判事を名指しで攻撃したほどだ。
他方、モラエス判事の態度は司法界では強い支持を得ている。それは8月に行われた選挙高裁の長官就任挨拶で、フェイクニュースなどに対して厳しい姿勢で臨むことを宣言した際、満場総立ちになり、長い喝采を浴びたことでも明らかだ。
だが26日、米国のニューヨーク・タイムズ紙が、モラエス判事の行為は「民主主義を護るためとしながらも行き過ぎていないか」という記事をあげた。国内でも「酒場の愚痴のような会話を真に受けて犯罪性を問うのはやりすぎ」との声もすでに上がっていた。
だが同紙は国際的な新聞の中でも、独裁志向の強いボルソナロ氏の政治姿勢に最も批判的な論調を展開していたメディアの一つだったため、特に驚きをもって受け止められた。
米国人のジャック・ニカス氏とブラジル人のアンドレ・スピガリオル氏による記事は、9月初旬にモラエス判事の判断で行われた、ルシアノ・ハン氏ら、ボルソナロ大統領支持者の企業家8人に対する捜査を取り上げた。この捜査は、企業家らがワッツアップ上で、「ボルソナロ氏が大統領選でルーラ氏に敗れたら、ボルソナロ氏がクーデターを起こすことを擁護する」と語ったことに起因している。
この記事では、モラエス判事の行動は左派の国民やメディアには好意的に受け入れられているが、司法界の中にはこれをおかしいとする声も少なからずあるとして、「最高裁に反民主主義的な世論を取り締まる権力があるのか」「そのこと自体が民主的ではないのではないか」との司法界からの声も紹介している。その中には、最高裁を昨年退官したばかりのマルコ・アウレーリオ・メロ氏によるものも含まれている。
この記事が掲載されたのと同じ26日、連邦警察の退職警部ら131人が連邦検察庁に対し、モラエス判事による大統領派企業家8人の捜査に関し、「権力の濫用ではないか」として捜査する請求を出している。
ニューヨーク・タイムズの記事の中では、元最高裁判事のアントニオ・セーザル・ペルーゾ氏の語った「最高裁は非民主主義的な威嚇に黙っているべきではない」とする意見も紹介しているが、その一方で、モラエス判事が2019年に当時最高裁長官だったジアス・トフォリ判事に疑惑が浮上した際の報道に、フェイクニュースとして掲載不可の判断を出したことを紹介。その上で、最高裁判事全員更迭などを主張したダニエル・シルヴェイラ下議の現行犯逮捕と被選挙権剥奪、極右ジャーナリストのアラン・ドス・サントス氏の逮捕命令を出したことなどを報じている。