site.title

小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=13

2023年6月16日

 会話がちぐはぐであるが、ユーモラスだ。永い旅の緊張から解放された田倉親子は、ほっとした心の緩みから急に睡魔に襲われて、直ぐに寝床に案内された。
 耕地における第一夜が明けた。昨夜、闇の中で見つめた地獄絵かとも恐れた自然は、すごく爽やかで清々しい。眼前に広がる牧場では牛や馬が尾を振りながらのどかに草を食んでいる。アヌーと呼ぶ黒い小鳥が家畜の背中や頭などを飛び跳ねて皮膚の寄生虫を捕っている。
 谷の彼方には、コーヒー樹林の等高線が緑の孤を描いて空の果てと接していた。裏山には早朝からオームの声が聞こえている。大自然の中で聞くのは、決してやかましくない。むしろ快い自然...

会員限定

有料会員限定コンテンツ

この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。

認証情報を確認中...

有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。

PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。

Loading...