小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=74
頑固である割りに、すぐ自己批判、自己嫌悪に陥る浩二だった。屋外で暁を告げる鶏の声が聞こえる。天井の近くにある鉄窓が白んできた。浩二は一睡もできなかった。いつもの癖の耳鳴りがした。
有村兄弟と、植民地の男たちの奔走によって、四日目の朝、若者たちは留置所から解放された。警察署長は彼らを見わたしながら、戦時下にあるブラジル側は、君たちにいろいろの制約を課しているが、これはあくまでも国際政治上のかけ引きであって、多国籍人種の混淆するブラジル国民に敵味方はない。この度の事件も戦争と関係ないと信じている。ダミオン一味はもう植民地には侵入しないように言い伝えたし、君たちも騒...
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