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息子を奪った火災と闘う=女性消防士のデボラさん

2024年7月9日

ユニフォーム姿のデボラさん(© Marcelo Camargo/Agência Brasil)
ユニフォーム姿のデボラさん(© Marcelo Camargo/Agência Brasil)

 世界一の湿地帯パンタナルでは400人以上の女性消防士が火災との戦いの第一線に立っているが、その中の一人のデボラ・アヴィラさん(42)は生後5カ月の息子を失ったことで消防士となったと4日付G1サイトなど(1)(2)(3)が報じた。
 デボラさんが国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)所属の消防士となったのは2023年だ。消防士の採用試験を受けたのは、2020年に生後5カ月だった息子のガブリエル・ダヴィ君を失ったことが直接的な原因だった。

火災現場でのデボラさん(© Marcelo Camargo/Agência Brasil)
火災現場でのデボラさん(© Marcelo Camargo/Agência Brasil)

 ダヴィ君は生まれつき、様々な臓器の機能に問題を引き起こす可能性がある遺伝性疾患のエドワード症候群を患っており、生まれた時から肺が弱く、携帯型酸素ボンベが必要だった。そんなダヴィ君が肺の合併症で亡くなったのは、パンタナルが炎と煙に覆われ、多くの人が健康被害を訴えている中でのことだった。
 彼女はこの時、うつ病にも罹ったが、ダヴィ君の担当医から、彼の命を縮めたのは火災による煙だと告げられ、清浄な空気が必要だった我が子が町を襲った火災に伴う煙によって短命に終わったと知ったデボラさんは、煙によって子供との日々を奪われる母親を少しでも減らし、子供と過ごす日々を楽しんで欲しいとの思いで消防士になった。
 Ibamaの消防士採用試験に合格後、放水用のホースや消火用の送風機といった機材を運び、消火活動に携わるために必要な体力を試す試験にも合格したデボラさんは、炎の脅威にさらされている土地で前進するのに不可欠なチェーンソーの操作方法も習得した。
 マット・グロッソ・ド・スル(MS)州コルンバー在住のデボラさんは十代の頃から様々な職に就いたが、消防士になることは考えたことがなかった。
 だが、息子の死が転機をもたらした。現在の彼女は45人の消防団員の中で唯一の女性だが、息子を失った経験から、火災で呼吸困難に陥っている子供や高齢者がいるかも知れないと思い、仕事に行く途中も家々に酸素が届けられているかに心を配る。
 家を出れば帰りが何時になるかもわからないことを不思議がっていた夫も、今は、「行って来る」の言葉に「行っておいで」と返してくれるという。
 消防士になってからは学校に戻ることも考え始めたというデボラさんは、働くために7年生で退学したが、今は環境などについて学ぶためにも中学を卒業したいと考えている。また、調理について学ぶために大学に行くことも考えている。昔、家族を助けるために祖母と共にチパと呼ばれるこの地域特産のチーズパンを売っていた時のことなどを思い出しているからだ。今はパラグアイ川で獲れる魚が大好きで、レシピを作ることを楽しんでいるという。
 Ibamaと契約するMS州の消防士(Prevfogo‐MS)の活動を調整するIbma環境マネージャーのタイナン・ボルナト氏によると、雨不足でパンタナルの洪水と干ばつは変化しており、火災の時期は消防士の働きが基本だという。数年前からパンタナルでの干ばつ到来を予想していたという同氏は、11月以降、雨が降らなくなり、洪水も起きなくなった。森林火災も6月としては史上最悪だと嘆いている。
 Ibamaでは6~12月に消防士を雇用するが、近年は6~12月だけが危機的な時期とは言えず、契約期間延長の必要も感じているという。MS州では6~12月に145の消防団が作られ、内五つは先住民族の消防団、もう一つはコルンバーに本拠を置くパンタナル専門の即時雇用団だ。
 デボラさんは消防団唯一の女性だが、彼女の物語は他の人達に勇気を与えており、人々にインスピレーションを与えるプロフェッショナルでもあるという。消防団参加に関心を持つ女性は増えているが、消防団参加者には体力試験と農具の使用試験への準備が必要で、様々な種類のスキルを持つことも重要だという。


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