バイデン撤退にルーラ沈黙=閣僚らは辞退宣言を称賛=フラヴィオ「ブラジルは?」

米国のジョー・バイデン大統領(民主党)が21日に大統領選から撤退すると宣言したことに対し、ルーラ大統領は22日午前中も声明を出していないが、ルーラ政権の閣僚たちからは続々と好意的な見解が述べられた。ルーラ政権関係者によると、バイデン氏の撤退で、大統領選でのドナルド・トランプ前大統領の風向きが変わることを期待していると同日付フォーリャ紙(1)が報じている。
バイデン氏は6月27日のトランプ氏との討論会で口ごもりが見られたりして酷評されたあたりから再選を不安視されはじめたが、その後も、ウクライナのゼレンスキー大統領を紛争相手のロシアのプーチン大統領と混同して紹介したりする失態が重なり、82歳の高齢を不安視する声が続出。今回の出馬断念も、オバマ元大統領など、民主党の重鎮らの説得を受けたものだった。
バイデン氏の出馬撤退に関し、ルーラ大統領はまだ声明を発表していない。側近によると、その背景には、同国の選挙に他国の国家元首として干渉したくないとの思惑があるとのことだ。
また、バイデン氏自身、さらに2016年の大統領選候補だったヒラリー・クリントン氏を始め、民主党重鎮らがカマラ・ハリス副大統領を後継候補に推薦してはいるものの、まだ正式決定でないため、早まった判断をしたくないとの意向も働いているものと思われる。
だが、その一方でルーラ政権の閣僚たちは続々とバイデン氏の決断を賞賛する声明を出している。自身も2022年の大統領選の候補だったシモーネ・テベテ予算企画相は、「バイデン氏は民主主義に尽力し、世界を極右の脅威から守った」と評価した。
ジョルジェ・メシアス連邦総弁護庁(AGU)長官も、「経済成長を促進する傍ら、労働者の権利を保護し、性的平等に務め、環境法を強化した。さらに、最高裁判事に史上初めて黒人女性を指名した」とし、多様性と包摂性への取り組みを讃えた。また、パウロ・テイシェイラ農業開発相も、「極右を打倒するために、勇気ある決断を行った」として、個人より国を優先した判断を褒めた。(2)
ルーラ氏自身も、今回の件での発言はまだ控えてはいるものの、6月に行われたラジオ局でのインタビューでは、「バイデン氏は間違いなく民主主義を守り続ける人だ。トランプ氏はあの議事堂襲撃で見ての通りの人。あれがあの1月8日の三権中枢数撃事件にまでつながった」として、トランプ氏を批判している。
連邦政府関係者の間では、バイデン氏の失言や、13日に起きたトランプ氏への襲撃未遂事件以来囁かれている、「トランプ氏有利」の世論をバイデン氏撤退で変えることができたらと期待されている。側近の一部は、トランプ氏が就任した場合、ルーラ氏が希望するようなドル以外の国際流通通貨を求める国が罰則を科されることを恐れている。
反面、ルーラ氏が以前の政権でジョージ・ブッシュ氏との方がオバマ氏よりも良い関係が築けたように、共和党、民主党のどちらが勝っても関係ないとする向きもある。
他方、トランプ氏と親しいボルソナロ前大統領の長男フラヴィオ上議は、「〝ブラジルのバイデン〟の撤退はいつだ」と、2年後の大統領選後に現在のバイデン氏と同じ81歳を迎える高齢のルーラ氏を揶揄する投稿を行っている。