ベネズエラ=ルーラ「大したことない」=12人死亡、800人逮捕でも=国内左派からも批判の声

【既報関連】ルーラ大統領は7月30日、米国のバイデン大統領とベネズエラの大統領選について話し合い、同国の中央選挙委員会(CNE)に投票の詳細な結果の開示を求めていくことで話が一致したが、その一方で、ルーラ氏は「大したことはない」とも語っている。同日付G1サイトなど(1)が報じている。
バイデン大統領とルーラ大統領の電話会談は、ブラジリア時間の15時30分から30分ほどだった。ホワイトハウス側は会談後に出した声明に、「民主主義の危機に関わる重大なこと」と記述しているが、ブラジル連邦政府が出した声明ではそのような記述はなされていなかった。
バイデン大統領はこの電話でルーラ大統領に対し、ベネズエラの大統領選をどう思うかと尋ねた。
ルーラ氏はこれに対し、選挙直前の7月26日にセルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問を同国に派遣して以降、マドゥーロ氏と対抗馬のエジムンド・ゴンサレス氏に関する情報は逐次聞いているとした上で、「投票過程を正常化させることはすべての地域に対してポジティブな効果がある。日曜日に行われた選挙の議事録(投票箱ごとの投票を記録した速報)を公開することが不可欠だ」と繰り返し述べ、票全体を見てから評価を行いたいと伝えた。
このこと自体は7月29日に外務省が発表し、アモリン氏も繰り返した内容と同じだ。
だが、ルーラ氏はその一方で、今回のベネズエラ大統領選に関し、「何も深刻なことはなく、驚くようなこともない」とも語っている。同氏所属の労働者党(PT)も、党内の一部からの反対があるのに、上層部が29日、「マドゥーロ氏は国の分裂を平和に解決する方向に向かうはずだ」と、マドゥーロ氏の当選を認めるような声明を出している。
また、アモリン氏は投票後にマドゥーロ氏と直接会い、議事録の公開も要請したが、マドゥーロ氏は3日はかかると答えている。そうしたことから、ネット上では「ルーラ氏は独裁者を擁護している(Lulaapoiaditador)」とのハッシュタグが大量に掲げられ、「ルーラ氏はマドゥーロ氏が票を改ざんするための猶予を与えてしまっている」と称したCNNブラジルのように批判的な論調が強まっている。
今回の大統領選に関してはブラジル内の左派の間でも批判が起こっており、ランドルフ・ロドリゲス上議やレジナルド・ロペス下議が選挙での不正疑惑を語り、マドゥーロ氏の態度に批判的な発言を行っている。
ベネズエラ国内では、29日の大統領選の結果発表後から連日、各地で抗議活動が行われている。抗議活動参加者と治安当局がもみ合いになったりして出た死者は7月31日朝現在で12人とされているが、その後も増え続けている。逮捕者も800人以上出ている。
アモリン大統領付外交問題特別顧問はブラジル帰国に先立つ7月29日、マドゥーロ氏に対し、反対派6人が逮捕を恐れてカラカスにあるアルゼンチン大使館に逃げ込んでいることに対し、踏み込まないよう頼み出ている。
マドゥーロ氏は同日、アルゼンチンをはじめとする中南米7カ国の大使を追放しており、アモリン氏だけがマドゥーロ氏との接触を保てている。
また、マドゥーロ氏がゴンサレス氏と野党リーダーのコリーナ・マチャド氏をクーデター首謀者として訴えたことを受け、その後に予想される混乱や逮捕命令が出る事態を懸念したコスタリカ政府が7月30日に、両者が亡命を希望した場合は受け入れる用意があるとの姿勢も示したが、マチャド氏は謝辞と共に、自分のいるべき場所はここだとして、申し出を断っている。