墜落事故=機体各所に不具合続々=氷着問題は数年前から=直前の音声の抽出成功

【既報関連】9日に起きた墜落事故を受け、ヴォエパス社のATR72型機の検証が進み、幾つかの問題点が浮上してきている。12日付グローボ紙(1)などが報じている。 サンパウロ州ヴィニェードで墜落したATR72型機では、3月に油圧系統で異常が確認された上、滑走路との接触事故で構造的な損傷が生じたとして、4カ月間、航行不能となっていたことは既に報じられているが、12日付グローボ紙によると、同機にはそれ以外にも、ナビゲーション機器などの技術的な問題があったことが指摘され始めている。
一つは、EHSI(電子式水平位置指示器)と呼ばれるナビゲーション機器が故障していたということだ。この機器は、飛行中の航空機と実際に想定された航路とのズレを確認するためのものだ。
さらに、エンジンの引火を知らせる警報ランプ、一部の車輪でのブレーキ、フロントガラスの清掃装置などで不具合が見られたという。
また、亡くなった乗客の一人、ロザーナ・サントス・シャビエルさん(23)が飛行中に家族に対し、「すごく機体が古くて飛ぶのが怖い。椅子も壊れている」とメッセージを送っていたように、複数の座席でシートベルトなどの異常があったとも伝えられている(2)。
これらの問題や疑惑に対し、ヴォエパス側は、「墜落機に関しては、飛行前の点検でも、飛行ができないほどの問題はなかった」とし、かねてからの主張を繰り返している。
また、事故の一因になったのではないかと推測されている、翼に付着する氷に関しても、ヴォエパス内部から別の問題が浮上している。それは、同社従業員がATR72型機の事故が起こる前に既に、別の機種で氷の問題に関し、苦情を申し立てていたことが判明したことだ(3)。
その飛行機はATR42型機で、セアラー州フォルタレーザ~フェルナンド・デ・ノローニャ島間を飛行していたという。この申し立てを受け、同機は今年の5月7~9日にこの区間の飛行を差し止めていた。
さらに、ATR機の翼の氷の問題が数年前から業界内で問題視されていたことも明らかになった。それは、航空機事故調査予防センター(Cenipa)が2021年に、ATR型の飛行機を操縦するパイロットに対する飛行訓練を強化するよう勧めていたことでも明らかだ。この指導は、Cenipaが民間航空監督庁(ANAC)から翼に氷が付着しやすいとの報告を受けたことで行われたという。翼に過度の氷が付着すると事故につながることは同型機のマニュアルにも書かれている。(4)
空軍は13日、墜落したATR72型機のブラックボックスが、墜落時の機内の様子を伝える音声録音に成功していたと発表した。ブラックボックスの録音内容は、航空機事故の直接的な原因を見極めるための決め手の一つとされている(5)。
なお、翼に氷が付着した場合は、早急に高度を落とし、氷が解けるのを助けるなどの判断が必要だ。しかし、同社の操縦士たちは、休日にも仕事の電話がきたり通勤手段が不十分で疲れが残るとの不満をもらすなどの勤務形態のあり方や、気候変化に応じた対応方法の指導の有無なども、今後の捜査の対象とされている(6)。