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『楽書倶楽部』第75号=読みどころ満載のコラム43編

2024年10月23日

『楽書倶楽部』第75号表紙
『楽書倶楽部』第75号表紙

 日毎叢書企画出版(前園博子代表)の『楽書倶楽部』第75号が15日に発行された。読みどころ満載のコラム43篇などが掲載された充実の148頁だ。読みどころの一部をここに紹介する。
 「出来事」(小林音吉)では、次男と一緒にアメリカン航空でダラスからサンパウロ市へ戻る途中、離陸後30分で「体調を崩したお客様がいるので、お医者様が乗っていればご連絡を」との機内アナウンス。医者の次男が常に携行する緊急セットを持って、例のお客さんの元に行き、40分後にダラスに引き返すとのアナウンス。引き返した後、3時間後に再離陸してサンパウロ市へ。パーサーが2度も次男に「ファーストクラスにお移りいただけませんか」と勧めに来たが、「結構です。医者として当然の務めを果たしただけ」と断ったとか。小林さんは「次男の毅然とした対応を見て、(内心行きたかったが)とてもファーストに移りたいなんて言えませんでした。(省略)この時ほど次男が頼もしく、誇らしく感じたことはありません」(26頁)と綴る。
 「ゲイ」(伊藤喜代子)では「私はゲイと呼ばれる人種が好き」と豪語する伊藤さんに、ゲイの友人のドグラスから「性転換してきた」と電話があり、好奇心のかたまりになった彼女は、「性転換の手術ってつまり、女性器を作ったのかしら?一体、その場所はどうなっているの? できたらそこを見せてもらいたい」と思い、思わず「ねぇ、ドグラス、私にその手術痕見せてくれない?」と言った。それが失敗だったらしく、「それを言った後、彼は2度と電話してこなかった」(104頁)と締めくくった。
 「ベティさんの庭」(大槻京子)ではアマゾン地域の暮らしの生々しい断片が語られる。「考えてみれば、私たちは入植してから、ブラジル人にどれくらいの物を盗まれただろう。最初は新品のパーカーの万年筆、衣類、(中略)今日までに実に多くの盗難に遭ってきて、次第に私は物には執着をしてはいけない、とそのつど自分の胸に言い聞かせるようになった。いかに思い出深い品であっても、物には固執してはいけない、と必死で納得しようと努めてきた」(114頁)。
 購読申し込みや作品投稿についての問い合わせは前園博子さん(電話11・3341・2113、Eメールnitimaisousho@gmail.com)まで。


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