無農薬や水耕栽培、観光農園=モジ市ピンドラーマ農業視察=(1)=元ブラジル移民が日本で起業

農林水産省からの委託事業で中央開発株式会社(CKC)が実施する「第2回日系農業者等連携強化会議」の一環として2月1日、モジ・ダス・クルーゼス市ピンドラーマ地域での農業現場視察が行われ、中南米諸国の日系農業関係者ら約80人がバス3台(1台はマイクロバス)に分かれて参加した。一行は、サンパウロ近郊の一大農業生産地である同地域の日系農園など4軒を訪問。葉野菜や果物などの生産状況について熱心に質問し、交流を深めていた。農業視察の様子を3回の連載で紹介する。(松本浩治記者)
小雨がパラつく天候の中、一行は同日午前7時半頃にサンパウロ市リベルダーデ区のホテル付近(サンジョアキン街)を出発。ピンドラーマ日本人会(寺岡睦夫会長)会館には午前9時半頃に到着した。
会員とともに一行を出迎えた寺岡会長は、同地域の農業生産者が葉野菜をはじめ、果物、キノコ類の栽培のほか、鶉(うずら)も飼育していることを説明し、「今日はあいにくの雨ですが、皆さんに来ていただき感謝いたします」と歓迎の意を表した。
ハードスケジュールのため一行は早速、ピンドラーマ日本人会館と幹線道路を挟んだ反対側に位置する「ピンドラーマ(池森)商店」を訪問。同店は約60年の歴史があり、パステルやコシーニャ等の軽食・飲料の販売を行っており、街道沿いに位置するため都市部からの旅行者や周辺住民・労働者などで日々賑わっているという。
雨が降る中、一行の訪問で満杯になった店頭で参加者と雑談していると、前日の会議で有機葉面散布肥料オルガミンを紹介した「株式会社パルサー・インターナショナル」社代表取締役の井上倫平さん(86、秋田県出身)が移民として1963年から71年までブラジルに住んでいたことを知らされた。

また、井上さんの隣にいたのは、同社のブラジル側総代理店「トロピカル・テクニカ・アグリコラ」社共同代表の尾崎俊彦さん(81、兵庫県出身)で、2人は大阪府立大学(現・大阪公立大学)時代の先輩後輩の関係にあたるそうだ。
井上さんは63年から1年ほどサンパウロ市ピニェイロス区にあったコチア産業組合技術指導部で農業技師として働いた後、ドイツ系バイエル社で農薬販売の営業などを経て、65年末にはロンドニア州ポルト・ヴェーリョで趣味の昆虫採集に没頭。66年からサンパウロ市の米系農薬会社に就職し、71年に日本に帰国した。その後、85年に現在のパルサー社を立ち上げた後、毎年のようにブラジルに足を運ぶ生活を続けている。
井上さんは今回、農水省の後押しにより、CKCが実施する日系農業者等連携強化会議に参加することができたと説明してくれた。(つづく)