site.title

商議所昼食会=ウジミナス元CEOが講演=米中対立下のブラジル経済=日伯協力に言及

2025年5月24日

講演する在ベロオリゾンテ日本国名誉総領事ウィルソン・ネリオ・ブルマー氏
講演する在ベロオリゾンテ日本国名誉総領事ウィルソン・ネリオ・ブルマー氏

 ブラジル日本商工会議所(羽地貞彦会頭)は16日、サンパウロ市のラゲット・スティロホテルにて定例懇親昼食会を開催した。ウジミナス社元CEOで現在は在ベロオリゾンテ日本国名誉総領事を務めるウィルソン・ネリオ・ブルマー氏を迎え「トランプの関税で世界貿易はどう変わるか」をテーマに講演を行った。約124人が参加し、同氏の世界情勢からみるブラジル経済の見通しに耳を傾けた。

 ブルマー氏は現在、CBL(ブラジルリチウム会社)およびIntegraS/Aの取締役を務める。過去には日伯初の国家プロジェクトとして設立された大手鉄鋼メーカー・ウジミナス社で経営審議会会長やCEOなどを歴任し、日本にも深い造詣を持つ人物だ。
 講演に先立ち、宮原達也副会頭(日本スチールブラジル社)がウジミナス社の沿革を紹介。同社の成功がブラジルの自立的重工業化の第一歩となり、日本にとっては戦後復興後の「資源外交」戦略の先駆けとなったこと、日本式の技術教育と経営導入がブラジルの産業人材育成に寄与した意義を強調した。また、「鉄鋼業界が厳しい時も、ブルマー氏がトップの時には経営状態が良かった」と述べ、同氏の実績を振り返った。

ウジミナス社の沿革を紹介する宮原達也副会頭
ウジミナス社の沿革を紹介する宮原達也副会頭

 ブルマー氏は、2024年のブラジルは3370億米ドルの輸出で750億ドルの貿易黒字を達成し、そのうち308億ドルが対中国貿易で、ブラジルの貿易黒字の約4割を占めたと説明。EUや米国との貿易は均衡している一方、日本との取引は黒字ではあるが取引額自体が小さいと述べた。
 米国に関しては、トランプ大統領が再び関税引き上げによる保護主義政策を推進しようとしているが、1930年代に同様の閉鎖経済で失敗した歴史を指摘。米国内の製造業強化を目指しても一度海外に拠点を移したのを戻すのは難しく、人材不足や高コストにより簡単ではないと警鐘を鳴らした。また、関税政策が物価上昇やインフレを招き、政治的リスクを高める懸念を示した。
 一方、ブラジルにはアグリビジネス、バイオエタノール、クリチカルミネラル(重要鉱物)、SAF(持続可能な航空燃料)や再生可能エネルギー、燃料電池などの分野で大きなビジネスチャンスがあるとし、「ピンチはチャンス」という考え方を日本から学んだと語った。
 特に鉄鋼業においては、中国が10億トンを生産する中、ブラジルは3400万トンと大きな差があるが、ブルマー氏が日本を初訪問した当時は中国もブラジルも大差なかったとし、今こそ生産体制の強化が必要と訴えた。

会場の様子
会場の様子

 また、ブラジルに対する中国の積極的な投資姿勢に言及し、日本も世界と対抗するために「意思決定を早めた国際戦略が求められる」と指摘。「日伯の中小企業をつなぐことも、両国にとって貴重なビジネスチャンス」となると締めくくった。


福島県人会=日本語会話と習慣を解説=非日系中心に約50人が参加前の記事 福島県人会=日本語会話と習慣を解説=非日系中心に約50人が参加ブラジル日系社会=『百年の水流』(再改定版)=外山脩=(172)次の記事ブラジル日系社会=『百年の水流』(再改定版)=外山脩=(172)
Loading...