site.title

連邦政府=中国製鉄鋼にダンピング調査=米中摩擦の狭間で国内市場を防衛

2025年6月7日

製鉄所での作業風景(Foto:Morteza Mohammadi/unsplash)
製鉄所での作業風景(Foto:Morteza Mohammadi/unsplash)

 ブラジル政府は3日、中国から輸入される鉄鋼製品について、ダンピング(不当廉売)の兆候と国内市場への損害の疑いが指摘されたことから、過去最大規模となるアンチダンピング調査を開始した。対象となるのは圧延鋼板製品25品目で、調査期間は最大で18カ月に及ぶ見通しだという。5日付ヴァロール紙など(1)(2)が報じた。
 この措置は米国が鉄鋼製品への関税を大幅に引き上げたタイミングと重なり、中国による過剰生産分がブラジル市場へ流入するとの懸念が高まる中で発動された。
 調査の主管は商工開発サービス省の通商保護局(DECOM)で、調査の開始は3日付連邦官報で正式に報じられた。タチアナ・プラゼレス対外貿易局長は5日の記者会見で、本件の背景と目的について説明した。
 対象となるのは、中国から輸出された鉄鋼製品のうち、「鉄鋼、合金鋼、または非合金鋼で、幅にかかわらず熱間圧延され、メッキや被覆等の表面処理が施されていない平板製品」。形状は、厚さ4・75ミリ未満のシート状製品(非ロール)で、厚さに制限のないコイル状製品も含まれる。25品目という対象数は、過去の調査での靴(23品目)や玩具(20品目)を上回り、DECOMとしては史上最多の調査規模となる。
 プラゼレス氏は、「今回の調査については米国の関税措置との関連を問う声もあるが、調査対象期間は米国による関税引き上げ前であり、今回の措置は米国の動きに直接連動したものではない」と強調。今回の調査では、ダンピングの有無を検証する期間が2023年7月〜24年6月の1年間、国内産業への損害の有無を評価する期間が19年7月〜24年6月までの5年間と設定されている。
 米政府は、ブラジルが中国から輸入した鉄鋼製品を米国市場へ再輸出する、いわゆる「三角貿易」の可能性に懸念を示しており、中国の過剰供給が間接的に米国市場に波及しているとの見方を強めている。一方、ブラジル政府は、今回の調査はあくまでも自国の市場保護を目的とした独自の判断であり、国際情勢を考慮しつつも、国内産業の健全性を最優先する方針を貫く構えだ。
 政府関係者によると、ブラジルと米国の鉄鋼産業は相互補完的な関係にあり、両国間の鉄鋼貿易は米国側の黒字であるという実情についても米政府に説明。現在も建設的な対話を継続中である。
 ダンピングとは、輸出国における国内市場価格や生産原価を下回る価格で国外に製品を販売し、不公正な競争を引き起こす行為を指す。アンチダンピング調査は、こうした行為によって輸入国の市場に損害が及ぶことを防ぐため、世界貿易機関(WTO)などが定めた国際ルールに基づいて行われる。調査の結果、ダンピング行為とそれに起因する国内産業への損害が確認された時は当該製品には最大5年間のアンチダンピング関税が課されることになる。
 プラゼレス氏は、「鉄鋼業界を取り巻く国際環境が大きく変化している中、今回の調査は極めて妥当かつタイムリーな対応だと考えている」と述べ、今後も国内鉄鋼業界の動向を注視しながら、調査結果に基づいて、必要かつ適切な対抗措置を講じていく方針を示した。


W杯南米予選=アンチェロッティ初戦飾れず=エクアドル相手に無得点引分前の記事 W杯南米予選=アンチェロッティ初戦飾れず=エクアドル相手に無得点引分フランス訪問=口蹄疫清浄国の認証式も=メルコスルとの貿易協定は次の記事フランス訪問=口蹄疫清浄国の認証式も=メルコスルとの貿易協定は
Loading...