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ルーラ=内政より外遊を優先?=情報発信力低下懸念の声も

2025年6月10日

5日、ブラジル国旗色にライトアップされたエッフェル塔の前でセルフィーを撮るルーラ大統領夫妻とマクロン仏大統領夫妻(Foto: Ricardo Stuckert/PR)
5日、ブラジル国旗色にライトアップされたエッフェル塔の前でセルフィーを撮るルーラ大統領夫妻とマクロン仏大統領夫妻(Foto: Ricardo Stuckert/PR)

 支持率低下が続く中、ルーラ大統領は全国行脚を通じて内政に注力するとの当初の方針を事実上棚上げし、外遊を優先する姿勢を強めている。広報チームによる発信強化の提言にも応じず、メディア対応やSNSでの発信に消極的な姿勢が続く中、政権の情報発信力の低下が懸念されていると、9日付ヴァロール紙など(1)(2)が報じている。
 ルーラ大統領は昨年、2025年1月から国内を回るとの意向を表明したが、実際には国外訪問の件数が増えている。24年前半は5カ国を訪問し、約10日間を国外で過ごしたが、25年前半は8カ国を訪れており、外遊日数は22日に達した。下半期も、カナダでのG7サミット、アルゼンチンでのメルコスル首脳会議、コロンビアでのアマゾン協力条約機構(ACTO)などへの出席が予定されており、国外日程集中が続く見通しだ。
 また、大統領の外遊にかかる費用も注目されており、ルーラ第3政権下では累計34カ国を訪問しており、大統領や随行団の宿泊費だけで約4700万レ(約12億円)に上る。中でも23年9月の国連総会出席時の宿泊費が最も高く、約760万レに達したと報じられている。(3)
 政府関係者によれば、大統領は国際問題には積極的に関与する一方で、国内政策や広報活動への関心が薄れているという。特に大統領府社会通信局(Secom)は、大統領による動画出演や国民との接点確保に苦慮している。同局はSNS発信の活性化を試みたが、大統領が次第に協力を拒むようになり、デジタル向け動画の制作は停滞しているという。
 25年上半期に大統領が行った記者会見はわずか2回で、政権への批判が高まる中での情報発信の機会が限られている。特に直近の記者会見は、金融取引税(IOF)引き上げによる混乱への対応の一環だった。Secomは、ルーラ大統領が国民に直接語りかけることで政権のメッセージを主導できると期待しているが、当人の非協力的な姿勢が課題となっている。
 政権支持率の下落は顕著で、4日発表のクエスチによる最新世論調査では、不支持率が57%と政権発足以来最悪となり、支持率は前回の41%から40%へと低下した。外交担当の側近によれば、外遊の多さは戦略的意図によるものであり、23年は国際関係の修復、24年は中南米重視、そして25年は地政学的再編をにらんだ対外関係の拡大を目指しているという。特に、米国のトランプ大統領が仕掛けた貿易戦争を背景に、経済的依存の見直しを図る狙いがあるという。
 また、大統領自身は外遊について、「投資家との約束を果たし、ブラジルの経済・政治・文化関係を拡大するためのビジネスだ」と強調し、ブラジルの経済規模を現在の世界第8位から第6位へ押し上げるとの意欲を示している。


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