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ドルが年初来の安値更新=米中合意とインフレ鈍化で

2025年7月10日

1ドル=5・538レアルに(Foto:Alexander Grey/unsplash)
1ドル=5・538レアルに(Foto:Alexander Grey/unsplash)

 米国のインフレ率鈍化と米中通商合意を受け、11日の外国為替市場ではレアルが対ドルで上昇。1ドル=5・538レアルと年初来の安値を更新し、2024年10月以来の水準となった。一方、国内市場は政府による金融取引税(IOF)の増税計画に慎重な姿勢を保っており、投資家の関心はフェルナンド・ハダジ財相の国会発言に集まっている。同日付CNNブラジルなど(1)(2)が報じた。
 11日のブラジル市場では、米中間の貿易摩擦緩和のための合意が投資家心理を大きく改善させた。トランプ米大統領は同日、両国が基本合意に達したとSNSで発表。中国は電子機器や兵器の製造に不可欠なレアアースや磁石の供給を米国に約束し、一方、米国は中国人学生の大学入学を継続的に認めることに合意した。
 加えて、中国は対米関税を125%から10%に、米国は対中関税を145%から55%に、それぞれ大幅に引き下げる方針も盛り込まれた。これにより、5月にスイスのジュネーブで結ばれた関税引き下げ合意が具体化し、対立緩和への期待が高まった。
 さらに、5月の米消費者物価指数(CPI)が前月比0・1%増に止まり、予想を下回ったことも追い風となった。年率では2・4%と安定し、米連邦準備制度理事会(FRB)の年内複数回の利下げ観測を強めた。これが、米長期金利の低下とドルの魅力減退を招き、レアル高を促進した。
 こうした国際情勢とは別に、国内市場では依然としてIOFを巡る政策動向が注目されている。財務省は週末にIOFの「再調整」に伴う財政補填策を発表し、非課税だった金融商品への課税開始やスポーツ賭博、金融機関に対する税率引き上げを盛り込んだ。金融投資に対しては一律17・5%の課税を設定し、企業が株主に対して支払う利益配分である株主資本利子(JCP)の課税率も15~20%に引き上げる方針を示した。
 これらの措置は財政収支の改善を目指したものだが、市場では慎重な受け止めが続く。特にIOF増税に関しては、ハダジ財務相が連邦議会で行う説明の内容が注目されている。同相は11日に下院が開いた公聴会に出席しており、与野党議員との間で激しい口論が起きる場面もあった。市場関係者は「IOFに関しては不透明感が強く、財相発言が今後の相場動向を左右する」と指摘している。
 また、同日行われた別の公聴会では、農業信用状(LCA)や不動産信用状(LCI)に対する所得税(IR)免除の撤廃を盛り込んだ暫定令(MP)が議論され、これも投資家の警戒材料となっている。政府はこれらの税制変更により歳入増を見込んでいるが、実施の詳細や市場への影響については依然として不確実性が残る。
 こうした国内の財政政策の不透明感が続く一方、為替市場では米中関係の改善や米国の金融政策転換への期待感が投資家心理を押し上げ、レアルは堅調な推移を見せている。イボベスパ(平均株価指数)も前日比で0・51%上昇し、13万7128ポイント台を回復した。専門家は「国際環境の改善は明確なプラス材料だが、国内政策の動向次第で相場の振れ幅は拡大し得る」との見方を示しており、今後の政府の動向が市場の最大関心事となっている。


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