IOF増税=下院が代替案の緊急審議承認=屈辱的大差で連邦政府敗北=協力政党もこぞって反対に

下院で16日、金融取引税(IOF)の増税に関する修正を含めて、11日に出された大統領令を覆すための代替法案を緊急審議にかけることが圧倒的な賛成多数で承認され、ルーラ政権の財政計画が一段と苦しい立場に置かれることになった。同日付フォーリャ紙(1)が報じている。
この日に審議されたのは、IOFの増税を主体とし、5月に出された大統領令を修正し、11日に他の暫定令(MP)と共に出した大統領令に代わる法案を緊急審議することの是非を問うもので、賛成346対反対97票の圧倒的な票差で承認された。承認に必要な票数は過半数の257票だった。
今回の投票では、連邦政府で合計12人もの閣僚を輩出している政党が与党に協力しなかったことが響いている。社会民主党(PSD)、ウニオン、共和者(RP)、進歩党(PP)、民主運動(MDB)、さらには左派の民主労働党(PDT)も、緊急議題として審議することに賛同した。
これに対して、反対票を投じたのは労働者党(PT)、ブラジル社会党(PSB)、社会主義自由党(PSOL)の3党に過ぎなかった。
これほどまでの大敗となった背景には、フェルナンド・ハダジ財相をはじめとしたPTの財政支出厳守のための対策への不満がある。今回の緊急審議にかけるか否かを問う審議で演説を行った下院野党リーダーのズッコ下議(自由党・PL)は、「ルーラ政権は肉を削るようなことをしていない」として、支出削減努力を行わないまま、国民に負担のかかる増税に解決を求めようとしていることを批判している。
また、ルーラ政権に協力しているPSDの下院リーダー、アントニオ・ブリット下議も、「わが党の党則ではいかなる増税にも反対の立場をとると決められている」と増税に強く反対する姿勢を示していた。
これに対し、下院政府リーダーのジョゼ・ギマリャンエス下議(PT)は、野党側が「高所得層への課税に対してこだわりすぎている」と批判している。
ハダジ財相は「支出削減を行うことで、低所得者層に回されるはずの支出が削られること」を強く恐れており、その代替案として、高所得者層により負担がかかることが予想されるIOF増税に行き着いたという背景がある。
だが、本来が規制税であるIOFが増税対象になることはハダジ氏の財務省ナンバー2を務めていたガブリエル・ガリポロ中銀総裁も難色を示しており、5月22日に最初の大統領令が発表された際も、財界からの反発で国外からの投資に関しては課税対象外とするなど、当初から波乱含みだった。ハダジ氏はその後、IOFの税率を引き下げ、農業信用証券(LCA)や不動産信用証券(LCI)の免税廃止、くじ、フィンテック、株主資本利息の増税で埋め合わせようとしていたが、依然として不評のままだった。
PT側はこの完敗を見越し、投票前にルイ・コスタ官房長官やグレイシ・ホフマン大統領府渉外室長官がウゴ・モッタ下院議長と交渉し、投票させないよう申し出ていたが、「あくまでも緊急議題にするか否かを問う審議だ」として聞き入れられなかった。 モッタ議長は投票結果について、「これは社会からの回答だ。誰が上階に住み下階に済むかの問題ではない」と発言している。(2)
具体的な代替法案の審議は、休日やサンジョアンの祭りが終わった月末から始まる予定だ。
政府側の政党リーダーらは、議会がIOFに関する大統領令や暫定令を覆した場合は議員割当金の支払いを凍結または減額しなければならなくなると警告しているが、大統領府は下院との対決を避け、対話による交渉を行うことを求めている。